(下)強い発信力 北陸初のプロ・オケ

  • オーケストラアンサンブル金沢がやって来る, 特集
  • 2022年7月13日
J・アクセルロッド
J・アクセルロッド
服部百音
服部百音

  日本のプロ・オーケストラ界は、かつて東京・大阪が中心だった。これはプロスポーツ界も同様だ。北海道の人たちは、「北海道日本ハムファイターズ」や「コンサドーレ札幌」を心からサポートしている。今や間違いなく「おらがチーム」である。オーケストラも似ている、と僕はつねづね思っている。

   俯瞰(ふかん)すれば、1945年設立の「群馬交響楽団」や53年設立の「九州交響楽団」は古株だが、「広島交響楽団」は63年発足で72年にプロ改組、「山形交響楽団」は72年、「仙台交響楽団」は73年の設立。そして「札幌市民交響楽団」として61年に発足し、翌年に現在の名称になったのが「札幌交響楽団」だ。地方のプロ・オケの誕生が60~70年代あたりに集中したことが分かる。

   一方、「オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)」の発足は88年。故岩城宏之氏の情熱が北陸に初のプロ・オケを誕生させた。しかも、ブルックナーやマーラー、ストラヴィンスキーなど近代の超大編成を偏愛する流れに逆行して欧米に生まれ始めていた室内オーケストラが、日本に初めてできたのである。それから34年。OEKは、毎年金沢で開かれる音楽祭の核というにとどまらず、日本オケ界の極めてユニークな存在として、強い発信力を持つに至った。

   今回の「オーケストラ・キャラバン」は、PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)ですでに北海道とは浅からぬ縁を持つJ・アクセルロッドの指揮、そしてヴァイオリン独奏は、服部良一・克久・隆之という音楽名門のDNAを継承する服部百音。さらに個人的な話を披歴すれば、20年近く金沢で仕事をし、のみならずOEKの顧問であり、さらに30年以上前から札幌に仕事場を持つ「セミ金沢人&セミ北海道人」の僕が何としても応援してしまう公演である。たくさんの方々に、ぜひ聴いていただきたいと切望している。

  (池辺晋一郎・作曲家)

        ◇

   24日午後1時15分開場、午後2時開演。苫小牧市民会館大ホール。全席指定一般3000円、高校生以下1000円。チケットは苫小牧民報社、市民会館などで販売中。

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