(上)質の高い演奏に注目

  • オーケストラアンサンブル金沢がやって来る, 特集
  • 2022年7月12日
オーケストラ・アンサンブル金沢

  日本オーケストラ連盟と石川県音楽文化振興事業団は24日、「オーケストラ・アンサンブル金沢」苫小牧公演を苫小牧市民会館大ホールで開催する(苫小牧民報社共催)。同オーケストラの魅力について、専門家2人の解説を紹介する。

        ◇

   どんなジャンルの音楽でも、出演者と演奏曲目がコンサートの魅力を生むことに変わりはないが、クラシック音楽の場合、その二つが相乗効果を生むところに醍醐味(だいごみ)がある。文化庁の「コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業」に含まれる「オーケストラ・キャラバン」として開催されるオーケストラ・アンサンブル金沢の苫小牧公演は、まさにその相乗効果が注目される。

   オーケストラ・アンサンブル金沢は、プロ奏者の室内オーケストラとしては日本で最初に設立された演奏集団。1988年の発足以来、30年以上にわたって演奏活動を重ね、音楽界での確固とした存在感と、質の高い演奏で定評のある楽団だ。初の苫小牧公演では、世界的に活躍するジョン・アクセルロッドを指揮者に迎え、クラシック音楽の中でも屈指の人気曲をプログラムに組む。

   その中の1曲が、「メンコン」の通称で知られるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。三大ヴァイオリン協奏曲の一つに数えられ、甘美で気品の高い旋律は常に音楽ファンを魅了する。主役の独奏ヴァイオリンが重要な役割を担うが、今回の独奏者は注目度の高い服部百音。99年生まれと、まだ非常に若い奏者ながら、国内の著名オーケストラと共演を重ね、逸材として既に広く知られた存在である。精緻にして果敢な演奏スタイルは、「メンコン」を高品位に仕上げるだろう。

   主要曲となるベートーヴェンの交響曲第7番も魅力的。気分を高揚させる激しい踊りの音楽を主体にしつつ、楽聖の一面である悲傷感も漂わせる。親しみやすい交響曲としては指折りの傑作だ。

   そして、外山雄三の「管弦楽のためのディヴェルティメント」が演奏会の冒頭を飾るが、2016年と18年のPMF(毎夏、札幌を中心に開催されているパシフィック・ミュージック・フェスティバル)で手堅い指揮ぶりを見せたアクセルロッドの手にかかれば、外山の現代曲も輝きを増すに違いない。大いに名演が期待される。

  (三浦洋・北海道情報大教授)

        ◇

   24日午後1時15分開場、午後2時開演。苫小牧市民会館大ホール。全席指定一般3000円、高校生以下1000円。苫小牧民報社、市民会館などで販売中。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。