石狩の山渓でテンカラ釣り オショロコマ 清流に躍る

  • 釣り
  • 2022年7月7日
朱色の斑点が特徴的なオショロコマ
朱色の斑点が特徴的なオショロコマ
オショロコマが身を潜めていた岩陰
オショロコマが身を潜めていた岩陰

  石狩管内の山岳渓流で、氷河期の生き残りといわれるオショロコマが毛針に反応してくれた。朱色の斑点をもつ魚体が清流にきらめく瞬間は、まさに感動的だ。改めて自然の恵みの素晴らしさを実感した。

   日本では北海道の一部地域だけに生息するオショロコマ。冷水を好み、イワナよりもさらに最上流部にすむ貴重な渓流魚だ。近年は自然破壊や釣り人口の増加などで生息域が狭まっているといわれている。

   そんな貴重な渓流魚に、今季初めて遭いに行こうと向かったのは6月上旬。遠くの山肌には残雪。風は冷たく、曇り空が先行きを暗示しているような気がした。

   岩だらけの河原に足を取られたり、倒木を乗り越えたりして、釣友と共に2時間近く釣り上がったが案の定、2人とも魚信すらない。「ぜんぜん駄目だなぁ」。堰(えん)堤をよじ登り、半ば諦めかけたところ、釣友の毛針に反応があった。朱色の斑点が特徴的な紛れもないオショロコマだった。15センチ足らずながら、シーズン初めにしては体高もある。「ようやくの釣果だ」。疲れを忘れさせるような会心の一匹に、釣友は満足そうな笑みを浮かべてリリースした。

   その後は今までの不振がうそのような展開だった。対岸の岩陰や緩やかな流れに毛針を打ち込むと、次々にヒット。その引きは「ググぐっ」と引き込むイワナと違い、流れの変化のようにしか感じられないほどわずかだ。そのか弱さがオショロコマの魅力でもある。

   タックルは2・7メートルのテンカラざおに2メートル弱のレベルライン。ヒットしたのは白系から茶系、黒系へと2度交換した12番の毛針。ネットに収めて撮影し手早くリリースすると、元気良く急流に戻っていった。

   日が差すようになり新緑がまぶしい。気温も上がってきたが、水温はまだ10度しかない。改めてオショロコマが冷水を好み、河川の最上流域に生息することを実感した。ここまでで5匹。下ってきた釣り人にも遭遇したが、さらに先に進むには深みに入らなければならない。2人ともクマ鈴を2個携帯し、爆竹や電子ホイッスルも鳴らしたが、クマのリスクも高まると判断しUターンすることにした。

   途中、目にした構造物には魚道らしきものもあったが、効果はあるのだろうか。今回の釣行では、オショロコマが限られた区間だけで繁殖を繰り返し、けなげに生きながらえてきたことを実感した。道内の渓流では外来魚の放流や繁殖も問題になって久しい。北海道だけに生息する希少種を守るためにも常に自然環境への配慮を怠らず、節度をもった釣りを心掛けたい。

  (筑井直樹)

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