厚真町で2008年にスタートして以降、地域を代表する冬の一大スポーツイベントに成長し、町内外から多くの人を呼び込むまでになった「あつま国際雪上3本引き大会」。実行委員長としてけん引し、郷土の活性化に挑んできた。
とにかくイベントが好きだった。「厚真って、やるってなったものを見守ってくれる先輩たちがいたし、一緒にやってくれる仲間もいた。自分たちだけではできなかった」と、これまでをしみじみと振り返る。
3本引き大会は、かつて町民運動会(集まリンピック)で行っていた競技を復活させよう―と町商工会の有志が立ち上がり、07年の開催を目指して始動した。この時はチームの申し込みがなく中止になったが、翌年にチャレンジしたところ、町内から一般と小学生20チームの計200人以上も集まった。試合後の町民らが懇親で地元飲食店を利用し、経済効果は1日で80万円にもなった。
第3回大会(10年)からは町外へ枠を広げ、厚真のPRにもつなげた。珍しかった雪上綱引きのイベントは徐々に各方面から注目され、14年に名称を商標登録。19年から、道や道スポーツ協会などでつくる実行員会主催「ほっかいどう大運動会」の競技にも指定された。直近の第13回大会(20年)では、61チーム1000人超の選手がエントリー。インドネシア留学生チームの参加もあるなど、文字通り”国際”となった大会を陰になり日向になり支えた。
3本引き大会以外にもさまざな催しに関わった。2000年のミレニアムに合わせ、冬の打ち上げ花火を初めて企画した際、急きょ決まった事業とあって、充てる予算がなく協賛金集めに奔走した。「依頼で訪ねた企業から『本当に1回切りだよね?』って何度も念を押されて」と懐かしむ。次年度以降は町の予算に計上されるようになり、名物行事として多くの人を楽しませている。
町商工会の青年部時代、地域の小さな行事があれば、出店を開いて焼きそばを焼いたり、ビールを提供したりと大忙しの日々を送った。冬の町を明るくしようと、商店街にイルミネーションを灯す活動も長く続け、町民の心を和ませた。イベントのアイデアが出るのは決まって「仲間と飲んでいる席」だった。「1人が『やらないか?』と言い出せば、周りも『やるべ!』ってなって」。とんとん拍子に話が進んだ。「青年部の活動が仕事だと思ってやっていたから」と、苦に感じたことは一度もない。「当時、町の中核になっているという錯覚みたいなものがあったな」と笑う。
一昨年から続くコロナ禍でこの2年半、イベントをほとんど開催できずにいる。3本引き大会を2年連続で中止にしたのも苦渋の決断だった。「この間、休んでいたから、再び腰を上げるのは大変」と言うが、厚真を元気にしたいと、種をまき続けてきた情熱は今も冷めていない。
(石川鉄也)
池川徹(いけがわ・とおる) 1961(昭和36)年1月、厚真町生まれ。日本大学を卒業後、ふるさとに戻って就職。2016年からは町観光協会の会長を担い、地域振興に取り組んでいる。町商工会の有志でつくる「あつまを元気にする会」の会長も務める。厚真町表町在住。