2014年4月、大型商業施設・苫小牧駅前プラザエガオの運営会社がテナントに対し、破産とビルの閉鎖を通知した。それから8年。JR苫小牧駅前の一等地に残る巨大な空きビルに対処するため、市は建物や土地の権利を集約し再開発を目指しているものの、一部地権者との交渉がまとまらず、今も解消に至ってない。不透明感が漂う先行きに、中心街再生を願う商業者からも不安の声が上がる。
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同商業施設は、「サンプラザ」の名称で1977年11月にオープンした。株式会社サンプラザがビルの運営に当たり、ダイエー苫小牧店を核テナントににぎわい、中心街への集客をけん引した。だが、商業環境の変化で客足が落ち込み、2005年にダイエーが撤退。06年に苫小牧駅前プラザエガオに名称変更し再起を図ったが、14年8月までにテナントの全てがビルから抜けた。
市は15年に公共的見地から早期解決に向けて、土地と建物の権利を集約し、跡地利用を計画する民間事業者へビル解体を条件に無償譲渡する方針を立てた。29法人・個人の地権者との交渉に動いたが、一部地権者の理解が得られず、19年に訴訟へ発展した。1審、2審共に原告の地権者の権利主張が全面的に裁判所に認められ、市は敗訴。決着への道のりはより厳しいものとなった。
市は旧エガオの土地の権利を集約した上で、適切な土地利用計画を出した公募選定者に無償譲渡する方針を変えていない。その前段となる一部地権者の協力を得るための話し合いを続けたいという。6月の定例市議会では、民間による再開発を促すため、議員からビルの公費解体を求める意見が相次いだが、市は「相手(一部地権者)との一定の合意が必要」と答えるのにとどまり、対策の難しさを改めてうかがわせた。
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中心街の活性化は市にとって長年にわたる懸案。実現を図るため、市は昨年3月、都市再生コンセプトプランを策定した。駅前と、建て替え予定の市民会館(旭町)を結ぶ範囲を軸に再生し、歩きたくなるストリートを生み出したり、食や文化を発信したりしてにぎわいを創出するとした。今年度はより具体的な苫小牧駅周辺ビジョンを作る予定で、駅前に必要な施設や機能、事業性などを検討する。
しかし、中心街の活力を取り戻すには、いずれにしても駅前の空きビル問題が立ちふさがる。エガオのテナント靴店に長年勤めたという表町の靴店「夢の靴」の三輪猛彦代表(52)は「閉鎖で駅前商店街の人の動きはより減った。個店の力にも限度があり、早く解決してほしい」と訴えた。
苫小牧駅前通商店街振興組合の秋山集一理事長(71)も元気を失った街の今後を憂える。「シャッターを下ろす店も多い。市は一生懸命やっていると思うが、エガオ問題が前進すれば、商業者は中心街に再び希望を持てるようになるのでは」と語り、前途多難な状況の打破を切望した。
(室谷実)
=おわり=