国全体の目標を20年前倒しして、2030年度までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指す「脱炭素先行地域」。苫小牧市は2月、その第1弾の公募に挑戦したものの、環境省が4月26日に公表した選考結果に名はなかった。
選ばれたのは19道府県26地域の計48自治体で、道内では石狩市、十勝管内の上士幌町と鹿追町。苫小牧市は昨年8月に「ゼロカーボンシティ」を宣言し、脱炭素の取り組みを進めようとしているが、落選を受けて戦略の練り直しに迫られている。
脱炭素先行地域は、家庭や事業所、公共施設などからの二酸化炭素(CO2)排出の抑制に意欲的な自治体を25年度までに計100カ所ほど選定し、1自治体当たり5年間に最大50億円の交付金を出す制度。国は50年度までに日本全体で温室効果ガスの実質ゼロを目指しているが、先行地域から取り組みを広げて目標を達成させる。
苫小牧市は今回、公共施設の脱炭素計画を立てて応募に臨んだ。沼ノ端クリーンセンターに導入している廃棄物発電の電力を他の市有施設へ供給したり、太陽光発電装置を各施設に整備したりして、まずは行政財産の中で再生エネルギーの地産地消を展開する構想を示した。
■
だが、選考から漏れた。それはなぜか―。市環境審議会や定例市議会で市は何度もそう問われた。
今回選定された26地域中23地域は、一般家庭や民間施設も脱炭素の対象に含めて計画を作った。このうち15地域は民間企業との共同提案で現実性のある内容だったことから、市環境衛生部の担当者は「苫小牧の場合、対象施設の数や種類、民間企業との連携が不足していると判断されたのではないか」とみる。
応募の際、地域特性として苫小牧で行われてきたCCS(CO2の回収、貯留技術)実証試験もアピールしたが、「検証過程の技術のため、高い評価を得られなかったのかもしれない」と推察する。
市は計画を見直し、再度応募する構えでいるが、石黒幸人環境衛生部長は「民間企業との連携や地域特性の活用を盛り込むなど、より地域の利益となる実現性の高い計画に作り直す必要がある」と話す。
■
市は修正に急ぐ考えだが、そもそもゼロカーボンにどう向き合い、どう取り組んでいるのか、市民に理解されているとは言い難い。市環境審議会の委員で豊川町内会会長の岩田典一さん(70)は「世界的に脱炭素は必要な活動と思うが、市が地域や市民に何を求めているのか、よく分からない」と指摘する。地球環境を守るため、行政と市民の協働の力を発揮すべきだと強調し「市が考え方を丁寧に市民へ伝える努力をしていけば、053(ゼロゴミ)大作戦などの時のように協力する人は多いと思う」と注文をつけた。
(河村俊之)