【2】 津波防災 浸水域想定が拡大、道内最大に 避難ルート練り直し

  • 市政に問う 2022苫小牧市長選, 特集
  • 2022年6月7日
苫小牧市職員を講師とした澄川西町内会の防災研修会で、新たな津波浸水想定の説明に耳を傾ける住民=5月30日

  5月30日、苫小牧市の澄川西町内会防災部が地元総合福祉会館で開いた防災研修会。「どこに、どのように逃げればいいというのか」。集まった約30人の住民は、道が作成した新たな津波浸水想定について市職員から説明を受けた後、強い不安を抱いた。

   道が昨年7月に公表した津波浸水図は、日本海溝(三陸・日高沖)沿いを震源とするマグニチュード9クラスの巨大海底地震の発生を想定。苫小牧市の津波高は最大9・7メートル。前回想定(2012年)より1メートル超上回り、浸水域は1万224ヘクタールと、道内の対象自治体の中で最大というショッキングな内容となった。

   海から離れた澄川町でも、津波が押し寄せる範囲が従来想定より広がり、町内のほぼ全域が浸水。避難所の澄川小学校も1メートル以上の高さの水に浸かるとされた。第1波の到達時間も最短で40分程度。研修会で地域の浸水予測を詳しく説明した市危機管理室職員は「時間内にどこまで逃げられるか、事前に確認をしてほしい」と呼び掛けた。

   しかし、浸水域外で近くの避難所となる啓明中学校や苫小牧工業高等専門学校まで1キロ以上も離れて住む住民も。参加者からは高所に避難可能な施設整備を求める声が上がった。

   ■

   市は21年度から、新たな避難ルートを盛り込んだ津波ハザードマップ作りを進めている。8月までにエリア別マップ案をまとめた上で各地域の住民意見を取り入れ、年度内に完成させる予定だ。

   市は従来、人が1秒間に歩く距離の基準を1メートルとして避難ルートを設定していたが、今回は50センチ程度にする。住民の高齢化が進む中で、歩いたり、走ったりするのが遅くなった人たちが増え、そのペースに合わせるためだ。浸水域の拡大想定を踏まえ、同室の杉岡隆弘主幹は「これまでの水平避難に加えて、垂直避難の考え方もより重要になる」と話す。

   このため市は、民間にも協力を求め、アパートや事業所ビルなど一時的な津波避難施設の追加選定を急ぎつつ、垂直避難ができる施設整備も見据える。だが、具体化していくには財源確保をはじめ、道が今後公表を予定する道内市町村別の詳細な被害想定なども見極めなければならず、避難施設整備の実現までにあと数年はかかるとみる。

   ただ、災害はいつ起こるか分からない。澄川西町内会防災部長の瀬川敏紀さん(73)は「コロナ下で地域防災活動を行う難しさを感じており、住民が災害に備えるにも時間がかかると思う。市は、できるだけ早く方針を示してほしい」と訴えた。

 (河村俊之)

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