【1】コロナ経済対策 にぎわい戻す方策必要 影響深刻さ増す飲食・宿泊業

  • 市政に問う 2022苫小牧市長選, 特集
  • 2022年6月6日
コロナ禍で客足の不安定さが続く苫小牧市内の飲食店

  新型コロナウイルスの感染拡大は、苫小牧市内の飲食業や観光業にも暗い影を落とし続けている。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されるたび、歓楽街では時短営業や休業を余儀なくされ、店の明かりが消えた。宿泊施設は観光客のみならず、スポーツの大会や合宿などの自粛もあって甚大な打撃を被った。今は国から感染防止の行動制限を求められていないが、客足はまだまだコロナ前の水準に戻っておらず、感染症対策と地域経済回復を両立させるより強力な施策を訴える声が市内の業界関係者から上がる。

    ■

   大町の飲食店「IZAKAYA草―SOU―」を営む佐藤伸也さん(37)は近況について「1日数人しか来ない日もある」と顔をしかめた。感染症対策で座席数を減らし、団体客も8人までに利用を制限。「経営的に非常に苦しい」と嘆くが、希望の光も見いだしている。4月から市の地域経済対策「プレミアム(割り増し)付き商品券」の利用が増えたといい、「夜の街に繰り出す習慣を取り戻すきっかけになれば」と期待を寄せる。

   市は2020年2月に始まったコロナ感染流行の当初から、▽感染拡大予防▽地域経済対策▽健やかな日常―を重点に施策を進めた。特に経済対策は事業所のダメージの大きさを踏まえ、市の貯金に当たる財政調整基金を取り崩してまで積極的に支援を打ち出してきた。国の支援策に上乗せしてボリューム感を出すだけでなく、小規模事業者に特化した支援メニューも構築。消費を喚起するプレミアム付き商品券も4月から第3弾を展開している。

   それでも依然として深刻な状況が続く。歓楽街の錦町・大町の飲食店を中心に約90店が加盟する北海道料理飲食業生活衛生同業組合苫小牧中央支部の調査によると、コロナ前の19年時点と比べ、今冬は各店の売り上げが3~5割ほど落ち込んだという。行政から支援の給付金10万円が出たものの、同組合の斉藤芳夫支部長(72)は「感謝しているが、支援金は一時的なこと。街に人が戻る方策を考えてもらえれば」と切望する。

    ■

   宿泊業界も同様だ。苫小牧ホテル旅館組合によると、感染が広がった20、21年度の宿泊者数は、加盟10施設の多くで半減したという。佐藤聰組合長(56)は「宿泊需要が落ち込むというより消滅に近かった」と説明。銀行から運転資金を借りながら事業を続け「どこも何とか生き延びてきた状況だった」と振り返る。

   同組合や苫小牧宿泊業支配人会はこれまでに宿泊施設の利用促進策を要望。市は初の宿泊割引事業「とまとま割」を4月下旬から始め、今のところ利用は好調だ。しかし、コロナ終息の先行きは見通せず、ホテル側の不安は尽きない。宿泊需要につながる、各地から人を呼び込む有効な手だて―。それを求める声はやまない。

  (高野玲央奈、小笠原皓大)

  ◇

   コロナ対策や中心市街地再生、脱炭素社会の構築―。12日告示、19日投開票の苫小牧市長選を前に、市政に問われる地域課題を考える。5回連載。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。