北海道生まれの私だが、人生のうち40年近くを東京で過ごした。そこでずっと感じてきたことがある。それは、「東京をはじめ全国の人たちは、道民が思っているよりずっと北海道が好き」ということだ。
出身を聞かれて「北海道」と答えると、誰もが「いいですね」「うらやましい」と反応する。中には、尋ねてもいないのに北海道に旅行した思い出や「老後は北海道に住んでみたい」という夢を語り出す人もいる。
また、都内のデパートで定期的に開催される「北海道物産展」はいつも盛況だ。ソフトクリームやラーメンが食べられるコーナーには行列ができていて、「わざわざ1時間も並ぶの?」と道産子の私はビックリ。同時に「北海道って愛されてるんだな」とうれしくなる。
私がいま働いている穂別も、恐竜ファンでその名を知らない人はいない。すでに多くの知人から「一度、穂別博物館に行きたいと思っていたので」と”来訪予約”の連絡が来ている。
さて、道民は全国、いやもっと言えば世界から北海道に寄せられているこの熱い視線を、どれくらい感じているだろうか。住んでいると意外にそれに気づかず、「冬は寒いしどこに行くにも遠いし」と北海道にマイナスの気持ちを抱いている人もいるのではないか。それは知らないうちに、自分へのマイナス評価にもつながりかねない。実際に何人かから、「東京の人はすごいですよね、それに比べて私は時代遅れかも」といった自信のない発言も聞いた。
でも、それは間違いだ。むしろ全国の人が「北海道っていいな」「北海道で暮らせる人はうらやましい」と思っているのだ。もちろん、想像と現実には開きはあるが、この際、大いに全国の人のあこがれを利用してみるのはどうだろう。
「いいでしょう。自然はいっぱいだし文化的な面もあるし、もちろん食べものはおいしいし、北海道、最高!」
まずは私たちがそう宣言して、笑顔で暮らす。北海道で生きている自分に自信を持つ。そこからすべてが始まるのではないか、と私は思うのだ。
穂別診療所で働いていることを知った友人の中には、ごくまれに「なぜそんなところに? かわいそう」と言ってくる人がいる。そんな時、私は必ずこう返信する。「北海道も穂別もすごく楽しいよ。今度来てね!」。これは決して強がりではなく、私の本音なのである。
(むかわ町国民健康保険穂別診療所副所長)