「誤解と曲解と」

  • 内山安雄取材ノート, 特集
  • 2022年5月27日

 アジアにあってバングラデシュは、日本人にとって最もなじみの薄い国の1つではないだろうか。が、世界の縫製工場と呼ばれ、日本の服飾メーカーの進出が著しく、今や我(わ)が国とかなり関わりの深い国となっている。

 そのバングラデシュに出かけたおりのこと。1本の電柱に何百本どころか、時に1000本を超えようかという電線が複雑にからみついている光景をいたるところで見かける。電線の重みに耐えかねて、今にも倒れそうな電柱も珍しくない。いや、実際に電柱の倒壊や感電事故がしょっちゅう発生しているという。

 いくつかの報道によると――。このところの急激な経済成長にインフラ整備が追いつかず、やむなく電線を次々と張りめぐらせているのだとか。この私も、てっきりそうだろうとはなから思いこんでいた。

 ところがどっこい。バングラデシュの首都、ダッカで調べてみると、垂れ下がるようにして伸びている無数の電線は、ことごとく盗電のためだという。つまり貧しい住民たちが送電線から勝手に電気を盗んでいるのだ。そのことを電力会社もさして気にせず、あえて手を打たないなんて、なんだかおおらかなお国柄ではないか。

 話変わって――。アジアの多くの国では、列車やバスの屋根の上に乗客が押し合いへし合いしながら張りついている光景をよく目にする。これを見て、訳知り顔でいう人が多い。

 「貧しい人たちが屋根の上に群がって、無賃乗車を決めこんでいるのだ」

 さすがに私はそうとは思わなかった。が、立錐(すい)の余地もないほどに車内が混雑しているので、やむなく危険をかえりみず、屋根にしがみついているのだろう、とずっと思いこんでいた。しかし現地で改めて聞いてみると、そのわけはちょっと違っている。

 もちろん混雑のしすぎという事情があるにはある。が、それよりもエアコンのない列車やバスの車内は、熱帯ゆえに年がら年中炎熱地獄と化している。そこでわずかな涼を求めて、吹きわたる風を求めて、好きこのんで屋根の上に乗っているというではないか。

 もちろん無賃乗車なんかではない。ちゃんと正規の運賃を払っているそうだ。

 この二つの例にかぎらず、他にもいくらでも思いこみからくる曲解をしているような気がしてならない。海外の暮らし向きを書く私のような物書きとしては、特に自戒すべきだろう。

 ★メモ 厚真町生まれ。苫小牧工業高等専門学校、慶應義塾大学卒。小説、随筆などで活躍中。「樹海旅団」など著書多数。「ナンミン・ロード」は映画化、「トウキョウ・バグ」は大藪春彦賞の最終候補。浅野温子主演の舞台「悪戦」では原作を書き、苫高専時代の同期生で脚本家・演出家の水谷龍二とコラボした。

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