古き良き二刀流で氷都再建へ―。苫小牧市の小学年代以下のアイスホッケークラブ、レッドモンスターズJrは今年度から夏季は野球にも取り組む「二刀流クラブ」として活動をスタートさせている。複数の競技に取り組むことで運動機能の向上を目指すほか、減少傾向にある競技人口の底辺拡大も視野に入れる。
同クラブの団長を務める小林智紀さん(50)は「僕自身も小学校時代は野球とアイスホッケーの二刀流。苫小牧の子どもはそれが当たり前だった」と話す。当時はほとんどのスケートリンクが9月から営業を開始し、現在のように年中アイスホッケーができる環境ではなかったという。
当時の競技環境がつくり出した二刀流は、理にかなっていた。小林さんも「当時は『アイスホッケー選手はどの競技をやらせても上手だね』とよく言われた」と話すように、複数の競技を掛け持ちすることで、コーディネーション(体の使い方)が上達しやすくなるといわれている。
小林さんはこれまでも、同クラブの活動は平日の早朝のみに設定し、他の競技との掛け持ちを推奨していた。しかし「(掛け持ちでは)大会時に来られないのでは」などの理由から、子どもたちは別種目の団体になかなか加入できずにいた。その状況を鑑み、自分たちで全部やろう―と「二刀流クラブ」の発足を決意した。
指導者はアイスホッケーのコーチ陣から、野球経験者の小林さんを含む3人を選出。道具は知り合いから譲り受けたり、チームの予算から確保した。子どもたちが中学生になってからの受け皿として、苫小牧ポニーリーグ(中学硬式野球)と提携し、15歳まで野球にも打ち込める環境を整えた。構想段階から約3年がかりで「二刀流クラブ」が発足した。
初の野球練習は15日、苫小牧市内の野球場で行われた。同クラブ育成母集団の大坂孝弘会長(38)は「ルールを覚えるまではなかなかうまくいかないだろうが、諦めずに一から取り組んでほしい」と期待した。
団員11人は全員が野球初心者。まずは図で競技の流れを説明し、ゴロを捕球する基礎練習やティーバッティングなどを行った。
ウトナイ小4年の道政夏希さん(9)は「野球をやるのは初めて。いろんなことを教わり、少しずつできるようになったのが楽しかった」と好感触。「バッティングはアイスホッケーのシュートと似ていて、生かせそうだ」と手応えも感じた。
小林さんは今後について「試行錯誤しながら、責任を持って精進したい」と語り、温故知新の精神で苫小牧のアイスホッケーを盛り上げていく。