厚真町本郷のこぶしの湯あつまの「レストランこぶし」にこの春、苫小牧市在住の料理人、高松勝美さん(63)が社長付総料理長として約3年ぶりに復帰した。自慢の料理を振る舞うことで町への恩返しをしたいと考えており、「年配のお客さんにも利用してもらえるような商品を作って、コミュニケーションが生まれたら」と希望を抱く。
高松さんは、オホーツク管内の旧上湧別町(現湧別町)出身。札幌市内の飲食店で修業を積んだ後、千歳、苫小牧市内のホテルで長年にわたって腕を振るってきた。
「自然が豊かで、古里に似ている」と厚真町に好感を持ち、2010年から同レストランに勤務。名物の豚丼をはじめ、地元産おふくろみそを使ったチキンセット、ハスカップのおにぎりやソフト、ムースなど多様なメニューを創作し、町民や観光客をもてなした。その傍ら町民を対象に家庭料理教室を開くなど、住民との親交も深めてきた。
そんな中、18年9月に町内を襲った胆振東部地震で当時隣にあった高齢者施設が被災。商工会女性部の炊き出しを手伝ううちに「(移動が難しい)高齢者施設で役に立ちたい」とレストランを退職。高齢者施設の調理師として、お年寄りに優しい料理の提供に励んだ。
レストランに戻る転機となったのは、新型コロナウイルスが流行する中、常連客から聞いた「高松さんの味が懐かしい」との声。「懐かしく、おいしいと思ってくれる料理を提供することで、地元のお客さんに元気になってほしい」と再び厨房に立つことを決めた。
4月15日付で復帰し、現在は持ち帰りができるテークアウトメニューを考案中。「この町は高齢者が多く、こぶしの湯は唯一コミュニケーションを取れる場でもある。商品を利用してもらうことで、若い人とお年寄りの交流にもつながっていけば」と青写真を描いている。