国立アイヌ民族博物館では、アイヌ文化の地域性に注目した第1回テーマ展示「地域からみたアイヌ文化展 白老の衣服文化」をあす15日まで開催しています。白老地域の衣服に着目した本展は、昔から現在までに製作された衣服を展示し、この地域の衣服の特徴や歴史、作り手たちを紹介する内容となっています。
「衣服のひろがり~白老の衣服文化の現在~」のコーナーでは、アイヌ文化伝承活動の最前線にいる作り手たちの作品6点を取り上げました。自然素材を利用する手仕事を積極的に行う人、白老地域に伝承された模様を受け継ぐ人、自らの家系に残っている模様を受け継ぐ人などを紹介しています。
現在、伝承された衣服は、製作・着用している人の民族としてのアイデンティティーを表す重要なものとなっています。白老に受け継がれてきた衣服の技術や模様を学び、また普及活動を通じて次世代へとつながる新たな白老の衣服文化を創造する活動に取り組もうとしている様子を、聞き取りから知ることができました。今も昔も変わらず、アイヌ社会において衣服文化はとても大切なものであることを再認識できました。
準備期間中に行った関係者への聞き取り調査から、これまで想像していたよりも日高地方とのつながりが深いことが分かりました。これらのことは今回のテーマ展示にて紹介しました。これから日高地方の衣服の追加調査を実施し、取りまとめたいと思います。筆者の出身でもある白老の地域性は、私自身も知らないことも多く、少しずつ学びながら同僚たちと展示を作り上げました。これは一人の力で作り上げたものではなく、たくさんの人たちの思いや協力を得たことで初めて実現できた地域展であると実感しました。この場で皆さまにお礼申し上げます。本当にありがとうございました。(終わり)
(文=国立アイヌ民族博物館学芸主査・八幡巴絵。写真=同研究員・赤田昌倫)
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民族共生象徴空間(ウポポイ)・国立アイヌ民族博物館(白老町)のテーマ展「白老の衣服文化」は15日まで。観覧料はウポポイ入場料(大人1200円、高校生600円、中学生以下無料)に含まれる。