民法で定められた成人年齢が初めて引き下げられ、18、19歳でも契約が可能になったことは自立の道を開くことにつながり、前向きに捉えられる。ただ18、19歳の人たちが望んで成人になるわけではなく、引き下げによって不利益が生じることは避けなければならない。
選挙権をより広く与える発想に異論はないが権利が増えた分、責任も広げるのが当然だという風潮には疑問を感じる。
18、19歳は少年法改正で「特定少年」に位置付けられた。重大な犯罪を犯した少年については家庭裁判所が検察へ逆送致し、刑事裁判の手続きを課す犯罪の対象が広がり、実名報道も解禁された。17歳以下の少年とは区別された扱いを受け、更生を阻害しないか懸念がある。
逆送致されるケースがどれだけ増えるかは未知数だが、家庭裁判所による少年審判で軌道修正を図るという少年法が持っていた機能は失われる。大人と同じ刑事手続きを課すことで更生の可能性を狭めてしまわないか。
実名報道も犯罪を犯した人が分かることにより、被害防止になるという程度だと意義は薄い。罪を償って社会に復帰する上で大きな足かせになる。やり直しをしやすい環境を残すためにも、実名報道は相当慎重にすべきだ。
ネット社会では1社でも報道をすると拡散してしまい、すべてを止めることは難しい。少なくとも個人よりも大きな影響力を持つ報道機関は、実名報道をできるだけ避ける判断をしてほしい。
少年一人一人の成長度合いはばらばらで判断能力にも差がある。18、19歳の人は家庭環境などで問題が起きたら、周囲の大人や友達に相談する中で信頼できる人を見つけておいてほしい。親や司法も非行を予防するために積極的に関わり、寄り添う姿勢が欠かせない。
※この企画は報道部・姉歯百合子、樋口葵、河村俊之、石井翔太が担当しました。
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