新たな視点、興味持つきっかけに―白鳥王子アイスアリーナの水鏡見学会【氷都のいま、ここから】

幻想的な光景に包まれた白鳥王子アイスアリーナ

  解氷されたスケートリンク上に1基の照明がともる。「わあ、きれい」―。水面(みなも)にくっきりと出現した施設内の反転映像に、来場者から感嘆の声が上がった。

   白鳥王子アイスアリーナ=苫小牧市若草町2=で15日、「水鏡見学会」が開かれた。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの実施となった人気イベント。市内外から40人以上が足を運び、リンク整備の過程で見られる年に一度の現象に酔いしれた。

   インターネット交流サイト(SNS)上で企画を知り、札幌市から駆け付けた石郷岡直樹さん(46)は「とても貴重な体験になった。来年もぜひ来たい」。同市の高橋佳子さん(同)は「とてもきれいだった。幻想的な景色に見とれてしまった」と笑顔を見せた。

   同アリーナを指定管理する苫小牧市スポーツ協会が2018年に始めた催し。新型コロナまん延で2年間中止していたが、施設入場時の手指消毒や検温、見学時間の細分化など感染症対策を徹底させて実施に踏み切った。

   見慣れたはずの勤務先の光景に”異変”を感じたのは、同協会職員の浅田幸広さん(47)=現ダイナックス沼ノ端アイスアリーナ勤務=だった。17年4月、解氷作業が終了したリンクの様子を見に行った際、館内に唯一ともっていた非常灯が水面にくっきりと投影されていた。「とてもきれいだった…」

   日ごろから風景写真を撮るのが趣味だったこともあり、協会SNSにその光景を投稿すると驚くほどの反響があった。「いろんな人にアリーナや冬競技に興味を持ってもらうきっかけに」とイベントを考案した。

   国のアイスホッケー競技の強化拠点にも指定されている白鳥王子アイスアリーナ。60×30メートルのリンクには本来厚さ4・5センチの氷が張っている。解氷作業は氷の厚さを半分まで削ってから散水ホースで少量のお湯をまき、4日ほどかけて水状にする。

   アリーナ内の照明は20年にLED(発光ダイオード)化され、さまざまな色の光を放つことが可能になった。今回の見学会では赤色や青色など数種類の色を演出し、来場者を一層楽しませた。同協会は「今後も試行錯誤しながら、リンクの魅力を伝えていきたい」と意気込む。

   リンク内にたまった水は水鏡見学会後に排水され、現在は7月1日の再オープンに向け整備作業が進められている。

  (石川優介)

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   「氷都」の愛称で親しまれる苫小牧市。かつては至る所で冬の風物詩に触れる市民の姿が広がっていた。少子化や地球温暖化、スポーツ多様化などにより市民と冬競技の接点、競技人口は減少の一途をたどっている。岐路に立たされた氷都に改めてスポットを当て、情趣と話題を楽しみながら再興のヒントを探る。

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