ウトナイ湖野生鳥獣保護センター開設20周年 知ってほしい傷病鳥獣の現状

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2022年4月15日
ウトナイ湖野生鳥獣保護センター公式SNSのQRコード

  2002年7月28日、環境省と苫小牧市が共同運営するウトナイ湖野生鳥獣保護センターがオープンし、早いもので20年の月日がたとうとしています。当センターは環境省の「野生鳥獣の共生環境整備事業」の全国第1号として開設され、ウトナイ湖を含む国指定鳥獣保護区の適正な管理、啓発活動、傷病鳥獣救護活動などを主として行う施設で、これまでに100万人を超える方々に来館いただきました。この1~2年は、新型コロナ感染症拡大防止のため、幾度かの長期臨時休館もありましたが、それでも再び足を運んでくださる方々に日々感謝をしております。

   そして本年度は、開設20周年の記念行事としてさまざまなイベントを企画しています。特に7月下旬~8月中旬の夏休み期間は、セミナーや工作、小学生を対象としたイベント、特別展示などを予定していますので、広報等で随時ご案内させていただきたいと思います。

   私自身も当センターで救護活動を始め、15年が経過しました。この間に運び込まれた傷病鳥獣たちは約2000個体。そのほとんどが交通事故や人工物衝突など、人間社会が関与した要因で傷を負った野生鳥獣たちでした。このうち、約半数は自然界に復帰することができましたが、数パーセントは後遺症のため自然復帰できずに終生まで飼養となり、それ以外の個体は残念ながら命を落としました。

   私自身この救護の現場に来るまでは、人間社会が野生動物たちの生息に影響を及ぼしていることは知識としてはありましたが、次々と運び込まれる傷病鳥獣たちを目の当たりにし、それが身近な環境で起こっていることなのだと初めて実感したのでした。時には目を背けたくなってしまうような痛ましい事故や命が救えずむなしさだけが残ることもありますが、野生鳥獣の救護現場に携わる者の使命として、一人でも多くの方にこの現状を知っていただきたく情報発信を積極的に行ってきました。

   その一つとして、この紙面の連載も10年前から始まり、また近年では公式SNS(インターネット交流サイト)も活用し、ありがたいことに多くの方々に見ていただけるようになりました。

   開設20周年という節目の年。これからもこの救護現場の情報、現場だからこそ知り得る傷病鳥獣からのメッセージを、皆さまのもとへお届けできたらと思います。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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