「大変な時期を過ごしたが、新米町長を支援、後押ししていただき、(胆振東部地震からの)復興もここまで来た。北海道や近隣の町の支えを受けて何とか踏みとどまることができた」―。任期満了に伴い、12日に告示された安平町長選。再選を果たした及川秀一郎氏(57)=無所属=は、駆け付けた近隣の首長、地元の支持者らに感謝の言葉を伝えた。
早来町と追分町が2006年に合併し、安平町となってから2代目の町長となったのは18年4月。おそらく当時は思い描くことのなかった4年間になったに違いない。就任して4カ月ほど経過した同年9月、町は最大震度6強を観測した巨大地震に襲われ、かつてない被害を受けた。さらに約1年半後には新型コロナウイルスが流行し、二重の災禍に見舞われた。
逆境の中でのスタートとなったが、「ピンチをチャンスに」を合言葉に、できることをこつこつ積み上げた。震災翌年には「復興のシンボル」として道の駅「あびらD51(デゴイチ)ステーション」を開業させ、地域に活気を生んだ。住む家をなくした仮設住宅入居者には、住み替えに掛かる費用の支援を町独自に打ち出した。さらに地域優良賃貸住宅の建設を進め、特別養護老人ホームも移転改築。20年末までにすべての住み替えを完了させた。
地震で被災した早来中学校の再建に伴い、義務教育学校の基本設計・実施設計にも昨年度から着手。今年度秋ごろの完成を目指し、20億円を超える大型の事業を組んだ。
復興事業以外でも、教育・子育てを柱に掲げ、さまざまな「学び」を「挑戦」につなげる「あびら教育プラン」を19年にスタート。二つの町が合併して以来できていなかった両地区共通のポイント制度の導入、町内全域のブロードバンド化も進めた。
民間を活用した取り組みでは、スポーツセンターに指定管理者制度を導入し、トップアスリートが合宿でも使用できるトレーニング施設を整備。町内のエリア放送「あびらチャンネル」も外部委託し、番組の充実を図った。
これらを実現させた背景には、地域の小さなイベントや行事にも積極的に足を運び、さまざまな声を町民目線で丁寧に拾い上げてきたことがある。結局、昨年末の出馬表明から当選に至るまで対立候補が出てくることはなく、無投票当選につながった。後援会の竹内亨会長は「及川町長の1期目の実績はもちろん、多くの支援があってこそ」と評価し、「前途は多難と思うが、若さと情熱を持ってきっと立ち向かってくれる」と今後に期待を込めた。
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安平町長選で再選を果たした及川氏。町のリーダーとしてこれからどんなかじ取りを行うのか。1期4年間の成果を振り返るとともに、2期目に向けての課題、取り組みなどを探る。