【下】 難航する対立候補擁立 多選に批判 問われる野党の本気度

  • 5度目の挑戦 岩倉氏出馬表明, 特集
  • 2022年3月22日
岩倉氏の支持基盤はすでに固まったかに見える=19日、約350人が出席した後援会の集い

  「必ず、今回は選挙戦になる」―。苫小牧市長選に出馬表明した現職の岩倉博文氏(72)は19日、市内で開かれた自身の後援会の集いで、こう言い切った。2018年の前回市長選で自民党や公明党などの推薦を受け、初めて無投票で4選を果たした。「苫小牧の政治風土で、保守系候補が2回続けて無投票はあり得ない」と力説。過去に革新系市長が続いた歴史を念頭に、支持者の引き締めを図った形だ。

   集いの後、報道陣の取材に対し「支え合い、助け合う、ふくしのまちづくり」と早速、公約の基本テーマを示したが、具体的な政策の発表時期は「相手の動き次第」と警戒感も見せた。

   岩倉氏の態勢固めは着実に進んでいる。自民、公明両党にとって岩倉氏の推薦は「既定路線」で、近く組織決定する。自民党苫小牧支部長の遠藤連道議は「国や道が絡む重要案件も実現させ、市の財政再建や経済対策も評価できる」と全面的に支持する。公明党苫小牧総支部長の藤田広美市議も新型コロナウイルス対策や二酸化炭素の実質排出ゼロ(ゼロカーボン)の実現に向け、「大変な時期だから、経験豊富な市長が先頭切って進めることが重要だ」と実績を認める。

   一方、苫小牧の歴史上、市長を5期務めたのは1963~83年の故大泉源郎氏しかおらず、岩倉氏への多選批判もくすぶる。

   立憲民主党苫小牧支部幹事長の岩田薫市議はJR苫小牧駅前の旧エガオ問題について「市長が決断できなかったことが問題を長期化させた」と指摘する。同党は旧エガオビルの公費解体を争点にしたい考えで、「それ以外に方法があるなら早く示すべきだ」と解決を迫る。前回は前身の旧民進党勢力の分裂で足元が定まらず、候補擁立を断念したが、「市民に選択肢を示さなければならない」と意気込む。

   共産党苫小牧地区委員会も市民団体と協議を重ね、候補擁立を目指す。引き続きカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致に意欲を示す岩倉氏に対し、西敏彦委員長は「まだ諦めていないのか」とあきれ、「駅前問題が解決できないのも市長の責任。議会でも乱暴な言葉遣いが目立ち、謙虚さを失っている」と批判する。

   両党とも候補者選びに難航しているが、西委員長は「立憲側が擁立する候補者を支援することも視野に入れ、無投票は絶対に避けたい」と語る。

   市長選まで3カ月。有権者に責任ある選択肢を示せるか―。各政党の本気度が問われる。

   ※この企画は報道部・河村俊之が担当しました。

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