10日の本紙最終面「天気概況」によると11日は苫小牧の平年の根雪最終日だという。今年は10日朝でもまだ38センチの雪が残る雪の多い春。
自宅の2階から近所の屋根を見ると、確かに無落雪の水平な屋根には山盛りの雪が残っている。2014年、18年にも30センチ以上の雪が残っていたが、解けるまでには半月前後、かかったそうだ。春を彩るツツジやフクジュソウの開花が遅れるか。
平凡社新書「アイヌ歳時記 二風谷のくらしと心」によると平取町二風谷で生まれ育った萱野茂さん(1926―2006年)が子どもの頃、雪解けの進む春は大忙しだったようだ。フクジュソウの花集め、ギョウジャニンニクやニリンソウ採り、ウバユリ掘り、ウグイ獲りなどが目次に並んでいる。イタヤカエデの樹液採取は、和人の子どもも挑戦した。のこと空き瓶を持って山へ行き、木の根本に斜めに傷を付け、流れ出る樹液を瓶にためる。萱野さんたちは集めた樹液を煮詰め、乾燥したイタドリの茎に入れてアイスキャンデー作りに挑戦したとか。
往時の子どもたちは、まだ葉が開いていない時期に樹皮や幹の色、根本のコケの付き具合で樹種を見分け、樹液を採る知識を身に付けていた。静かな山や小川は、最良の教師だった。
ロシアのウクライナ侵攻が激しさを増す。子どもたちを故郷から追い払う暴虐が続く。北方領土では地対空ミサイルの訓練も。この戦争は子どもたちにどんな知恵を残すのだろう。(水)