かつては大半の学校でリンク造成が行われ、スケート授業も盛んに実施されていた小、中学の義務教育現場でも、その光景は減少の一途をたどっている。
小学校は24校中20校が造成した2014年度を境に減り始め、19年度は少雪など気象条件も重なって8校と1桁台にまで落ち込んだ。19年度を最後にリンク造成を断念した豊川小の小松修作教頭(46)は、天候に左右される側面から「授業計画を確実に遂行するため、苦渋の決断だった」と語る。
21年度は泉野、苫小牧西、大成、錦岡の4校にとどまった。泉野はアイスホッケー同好会のレッドスターズで監督を務める水橋徹教諭(50)が主に整氷作業を担当。水まきや除雪など「保護者の協力にも助けられた」と感謝する。
西の土井嘉啓校長(60)は教員たちの努力のかいあって完成にこぎ着けた学校リンクで、伸び伸びスケートを楽しむ子どもたちの姿に目を細める一方「今後も教員だけでリンク造成や維持をしていくのは難しい」と吐露した。
中学は1980年代後半からスケート授業の機会が失われていった。アイスホッケー部が冬期間の活動拠点にしてきた学校リンク造成も、市内のチーム数減少による合同化などで2015年度以降は行われなくなった。
体育教員としてアイスホッケー部顧問の経験を持つウトナイ中の中川恵介校長(60)は、リンク造成にかかる労力や費用に対する効果などを挙げ「スケートのまちとしてやりたい気持ちもあるが、現状では難しい」と語った。
スケート文化喪失を危惧した市教育委員会は、01年度から市内の小学校を対象に市の施設を利用したスケート授業を推奨。児童1人当たり年2回の授業ができるようバス移動費、施設利用料などを全額補助し、全校が毎年実施に至っている。
学校リンク造成校には除雪用スコップ、水まきホースなどの備品購入や水道代、整氷作業従事者への報償(1日600円。5回上限)も設けている。
一方で中学校は、身体の発達に伴う体育授業の多様化などから「スケート授業に時間を割くゆとりがないのでは」と市教委。働き掛けは行っていないという。
体育社会学専門で、学校体育や部活動問題などに詳しい北海道教育大札幌校の石澤伸弘教授(53)は「教員の働き方改革による労働時間削減で、一番の弊害になってしまうのは体育。他の競技に比べ、事前の準備などに労力がかかるスケートやスキーといった地域性を生かした競技は、どうしても淘汰(とうた)されてしまう」と説く。
地域住民らが学校運営に協力するコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)活用も一つの手法だが、「かえって学校や教員の負担が増す可能性もある」と指摘。その上で▽核となる1校に近隣の複数校で連携してリンクを造成し、シェアする負担の分散化▽市、市教委など行政主導のスケート文化保護、持続可能なリンク造成システムの構築―などを取り組むべき課題とし、「子どもたちの選択肢を大人の都合で減らしてはいけない」と話している。
(北畠授、石川優介)
(終わり)