Q…河岸の雪上を歩き回る細長い黒い昆虫を見つけました。何でしょうか?
A…セッケイカワゲラというクロカワゲラの仲間でしょう。
クロカワゲラという昆虫は、羽のあるグループと羽の無いセッケイカワゲラのグループに分けられます。真冬に活動するので、どちらも太陽熱を吸収しやすい黒っぽい色をしています。セッケイカワゲラは1930年に京都大学教授で登山家の今西錦司氏によって高山帯の雪渓で発見されました。
ほとんどのカワゲラは羽化した時に卵や精子がすでに成熟しているので、何も食べずに交尾と産卵を行うことができます。しかし、クロカワゲラの仲間は羽化した時に卵や精子が成熟していないので、産卵場所に向かう途中に卵や精子を成熟させる必要があります。川沿いの雪上を歩いているのは、トビムシなどを食べて卵や精子を成熟させながら産卵場所に向かっている途中です。
クロカワゲラの成虫が現れるのは、寒さが厳しくなる12月中旬ごろからで、3月末くらいまで見ることができます。でも汚れた川や土砂の流入の多い川には生息していません。
森林伐採や河川改修などが進む周辺では、見られる場所が急速になくなっています。カワゲラなどの水生昆虫がいることはきれいな川の証しです。
(文とイラスト 自然誌研究家〈ゆうふつ原野自然情報センター主宰〉村井雅之)=随時掲載