北京冬季パラリンピックの開会式で、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドルー・パーソンズ会長は「ピース(平和)」と叫んだ。しかし、国際社会が束になっても、ウクライナへの侵攻を続け、核兵器の使用をちらつかせ、原発まで攻撃するロシアの「独裁者」を抑えられずにいる。
IPCはロシアと同盟国ベラルーシの選手について、いったんは参加を容認したものの、開会式前日になって判断を翻した。「ロシアが参加するなら出場しない」とボイコットを表明する国が相次いだためという。
パラリンピックがもともと、戦争で負傷した兵士のリハビリのための大会だったことを思えばなおさら、選手が競技に挑む間にも現地に爆発音が響き、150万人を超す人たちが避難を強いられているのを許すことはできない。だが、ロシアとベアラルーシの選手たちも「国」の犠牲者といえる。本紙の取材に応じたウクライナ出身の音楽家が、ロシア人の友人が泣きながら謝ってきたことに触れ、「ロシアにも戦争を望まない人はたくさんいる。ロシア人がみんな悪い人だと思わないで」と話していたのが心に残る。
IPCは選手たちに秘められた力こそがパラリンピックの象徴だとし、四つの価値を重視している。その一つが、困難があっても諦めず、限界を突破しようとする強い意志だという。その価値をかみしめ、世界中が平和のために行動する期間にしなければならない。(吉)