渓流でサバ?「見たことない模様」 交雑魚〝イワメ〟に納得 年下師匠の教え今も忠実に従う

  • 釣り
  • 2022年3月3日
浮き仕掛けを説明する鎌田さん。ルアーやフライはしない
浮き仕掛けを説明する鎌田さん。ルアーやフライはしない
日高の渓流で釣ったヤマメとイワナの交雑魚(鎌田さん提供)
日高の渓流で釣ったヤマメとイワナの交雑魚(鎌田さん提供)

  苫小牧市表町の鎌田国孝さん(83)は2020年秋、ヤマメ釣りに興じていた日高地方の川で見たことのない模様の1匹に遭遇した。

   魚は体側の上部があたかもサバ。下はパーマークの残像が判断しかねる具合だった。港内や汽水域ならまだしも、上流にまでサバが遡上(そじょう)するはずもない、といぶかしんだ後に思い当たったのが、釣り仲間の俗称でいう「イワメ」。イワナ(アメマス)とヤマメの交雑魚だ。

   その日は友人と2人で川に下りた。3メートルほどの渓流ざおに0・5号のラインをつなぎ、人工イクラを餌にしてヤマメを狙った。場所は毎年10月から11月に通う釣り慣れた日高の中小河川で、ヤマメがたまる好ポイント。さおを出せばヤマメばかり必ず3桁、多い時だと200匹を超える釣果を上げたこともある。そんなヤマメ場だけに模様の異なる15センチほどの1匹に仰天した。持ち帰って写真を撮り、記憶にとどめていた。

   インターネット検索や書物で調べると、交雑は渓流魚や海の根魚でまれに見られ、ヤマメとイワナの交雑出現率は比較的高いという説がある。その模様から「カワサバ」と呼ばれてもいる。とはいえ、毎年1000匹以上ヤマメを釣り上げている鎌田さんにして「生まれて初めて見た」と言う珍しさだ。

   「気に入ったさおも針ももう手に入らなくなった」と嘆く鎌田さん。こだわりはあるものの、今は妥協して手頃な渓流ざおに持ち替え、無理な釣行はせずに楽しむことにしている。仕掛けは「苫小牧の釣り人では珍しいはず」という浮き仕様で、9号のヤマメ針のちもと付近に0・3号のガン玉をかませ、水深に応じてシモリ浮きを固定する。数十年前、ヤマメ釣りに誘ってくれた年下の”師匠”の教えに今も忠実に従う。

   川に着いたらすぐに釣り始められるよう、仕掛けはさおに仕込み済みだ。「せっかちだから」と笑う。「3度仕掛けを通して魚信がなければ魚はいない」。ヤマメのいるポイントを下流側から次々と攻め上る。見極めに時間をかけない。

   コロナ禍で釣行は減った。けれど仕掛けの用意は万端だ。その日に味わえるであろう緊張感と充実感に思いを募らせる。

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