「フルシチョフ首相は無能だ―」と言い放つ男に逮捕命令が出た。容疑は「重大な国家機密の漏えい」だ。何十年か前に新聞か雑誌で読んだ、旧ソ連時代の政治小話。
1991年に崩壊した旧ソビエト連邦時代に政治の周辺にあった温かみは、ロシアには引き継がれなかったようだ。ロシアが、ウクライナに侵攻した。
第2次世界大戦末期の日本とソ連の関わりを思い出す。岩波ブックレット「年表 昭和・平成史」によると、敗色濃厚の日本の広島に原爆が投下されたのは45年8月6日だ。その2日後の8日、ソ連は対日参戦を決める。そして9日、長崎に原爆投下。大戦は終結になだれ込んでいくが、その間にソ連はいわゆる北方領土占領に成功した。したたかさが引き継がれたのか、ウクライナ侵攻。続けられた米欧との駆け引き、交渉の裏で準備を進めて戦争になだれ込むまでを報道を通して目撃した。
誰の言葉が真実なのか。平和も非核も、重みは国や人によってまちまちなことを改めて学んだ プーチン大統領は、ロシアが核大国であると明言して米欧を威嚇している。駐日ロシア大使は25日、日本政府の制裁強化の表明に「北方領土問題にも影響が」とけん制してみせた。
首都キエフがテレビに映されていた。小学生ほどの男の子が「戦争だって分かってる。死にたくない」と大粒の涙をこぼした。「1人なんだよ。どこに逃げればいいのさ」と泣き叫ぶ老婦人。戦争は恐ろしい。(水)