新聞の用字の基本の一つは動植物名の片仮名表記。例えば椿はツバキ、薔薇はバラ。常用漢字を使い、できるだけ多くの人が読み、理解できるように―という狙いだ。
松竹梅は漢字で書けるが身近な木でも柏はカシワ。動物も犬や猫、馬や牛などは漢字が使えるが北海道にいる羆はヒグマ。記者は用字用語集を常に手元に置いて開き、表記を確認して、紙面上の不統一で読者を混乱させないようにしなければならない。これがなかなか難しい。
体の器官名や病名にも難解な言葉が多い。病気や生死、けがに関する言葉について、幻冬舎新書「がんと癌は違います」では「実は医者が使わない言葉」として意識不明、重体、危篤、心臓まひなどを挙げている。報道もテレビのドラマも、用語の再点検が必要かもしれない。
国民の2人に1人がかかり、死因の第1位の、がん。書名の「がん」と「癌」は、新聞では平仮名表記が基本だが、医療の世界では、まったく違う意味の言葉だという。がんはあらゆる悪性腫瘍の総称。癌と呼べるのは胃がんや大腸がん、肺がんなど「外界と管を通して接している上皮性のがん」だけとか。
新聞が片仮名で書くガンは渡り鳥のガン。長過ぎる冬、また大雪が新千歳空港や札幌圏の鉄路を埋め、高速道路などの視界を奪った。立春が過ぎても寒い日が続き雪の少ないはずの苫小牧でも道路脇や軒下に雪山が残る。ガンの北国への渡りの旅立ちも遅れているのでは―。(水)