視力失ったオオコノハズク 自然に帰れず終生飼養 ウトナイ湖野生鳥獣保護センター 救護室のカルテ

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2022年2月18日
終生飼養となったオオコノハズク

  また、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターに終生飼養の鳥が1羽増えてしまいました。終生飼養とは、けがなどが原因で自然復帰がかなわず、その個体を生涯にわたり飼養することです。

   2021年12月、1羽のオオコノハズク(フクロウ目フクロウ科)が搬入されました。本種は、北海道では一年を通じ生息しているフクロウの仲間で、普段は平地から山地の森林で生息していますが、秋になると移動する個体も多く、その際に事故などにあってしまうのか、当センターのオオコノハズクの保護は秋から冬にかけて多く記録が残ります。また、意外に思われるかもしれませんが、そのほとんどが森林ではなく、住宅街で保護されています。

   この日も、市内のある場所で、道路脇で飛べずにいたところを保護されました。おそらく交通事故に遭ったのでしょう。頭部を強打したようで、目はつむったまま顔を胸に沈め、時折頭を水平に振る神経症状を認めました。なんとか自力で立ってはいましたが、意識レベルは低く、触れてもほぼ反応を示しません。非常に厳しい容体でしたが、2日目になると神経症状は徐々に落ち着き始め、うっすらと目を開けるようになりました。

   まぶたの下に、特徴的な大きな目をのぞかせてくれたオオコノハズクでしたが、その目の瞳孔は開いたままで光に全く反応しませんでした。それは、視力を失っていることを意味していました。その後も治療を続け、神経症状は回復し容体は安定したものの、目の状態は一向に良くなりませんでした。

   それでもオオコノハズクは目が見えずとも、手探りならぬ足探りで、低位置に設置した止まり木なら、自らよじ登れるようになり、またその上を自由に歩くことも可能になりました。ただ餌については、見えないためか認識できず、自力で食べることができないため、私たちスタッフで介助しながら与えています。

   大自然を自由に羽ばたいていた環境から一転、何も見えない暗闇の世界で生きなければならなくなったオオコノハズク。その大きく美しい目を見ると、実は見えているのではないかと錯覚してしまいそうになりますが、残念ながら今も回復の見込みはありません。それでも日々を懸命に生きるオオコノハズクにとって、生涯にわたり私たちが光となれるように、そしてこのような現実が身近にあることを伝えていかなければならないと改めて思うのでした。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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