白老町とアイヌ民族文化財団(札幌市)は1日、同財団が管理運営する民族共生象徴空間(ウポポイ)・慰霊施設の敷地を災害時緊急避難場所にするための協定を締結した。気象庁が白老町に津波警報を発令した際、ウポポイの来場者や地域住民が避難できるよう敷地を開放する。町と同財団が災害時協定を結ぶのは初めて。
アイヌ民族の文化復興と発信拠点として2020年7月に開業したウポポイは、ポロト湖畔の国立民族共生公園と国立アイヌ民族博物館、丘陵地の慰霊施設で構成。全国の大学などが研究目的で収集・保管していたアイヌ民族の遺骨を納めた慰霊施設(町白老615)は、標高55メートルの高台に整備され、敷地面積は1・5ヘクタールある。
今回の協定は、慰霊施設の敷地を津波災害時の緊急避難場所にするという内容。津波警報が出た際、ウポポイ来場者や地域住民らが徒歩で逃げて来られるよう敷地を開放する。慰霊施設はウポポイの営業時間以外、出入り口のゲートが閉まっているため、時間外に津波警報が発令された際には、ウポポイの警備員や職員が即座にゲートを開ける。敷地の収容人数は5000人とした。
町コミュニティセンターで行われた締結式では、戸田安彦町長と同財団の常本照樹理事長が協定書に調印。道が昨年公表した新たな津波浸水想定で、白老町の最大津波高や浸水範囲が従来想定より拡大したことを踏まえ、戸田町長は「津波対策は急務。協定は防災力の向上につながるものであり、大変心強い」と述べた。常本理事長も「住民の安全確保に町と連携して取り組みたい」と話した。
町が指定する津波の緊急避難場所は、今回の慰霊施設を含めて46カ所となった。町は最大津波高9・2メートル、浸水想定面積3026ヘクタールとされた新たな津波浸水予測に基づき、防災マップの改定も進めており、新年度の早い時期に全戸配布する予定だ。