新型コロナウイルス感染の急拡大を受け、道は21日の感染症対策本部会議で濃厚接触者を特定する「疫学調査」の重点化を打ち出し、苫小牧保健所も対応を転換した。疫学調査は(1)患者本人(2)同居する家族ら(3)重症化リスクの高い施設―に限定。同居していない知人や友人、職場などは疫学調査の対象から外した上、患者本人や職場責任者が「感染の可能性がある人」を判断し、連絡や対応をしてもらう流れとなった。
これまでは保健所が、感染者に聞き取り調査し、特定した濃厚接触者に対して、10日間の外出自粛や健康観察を求めてきた。
しかし道は、感染の急拡大と保健所業務が逼迫(ひっぱく)する現状を踏まえ、患者本人や同居家族、重症化リスクが高い人に必要な医療資源を集中するため、知人や友人、職場(重症化リスクの高い施設を除く)を疫学調査から外すことにした。
感染者が無症状か軽症の場合、自ら「感染の可能性がある」と判断した人に連絡してもらう。その対象者は症状があれば受診し、症状がない場合は自主的に外出自粛や健康観察に取り組んでもらう。
例えば感染者から職場に連絡が入った場合、その職場の責任者が勤務実態などを踏まえ、「感染の可能性がある人」を決める。保健所は原則関わらないため、外出自粛や健康観察などの期間は、職場ごとの判断や指示に委ねられる。
道は対応マニュアルをホームページで公開。「感染の可能性がある人」として、陽性者の発症2日前から、(陽性者が)マスクを着用せず対面で1メートル程度以内、15分以上話した人などを目安に示した。感染の可能性がある場合、1日2回の体温測定、不要不急の外出自粛などを求めている。
苫小牧保健所は今月に入り、胆振総合振興局と東胆振1市4町から約20人の応援を受け、90人体制で疫学調査を展開しているが、検査数は右肩上がりに増加。健康観察が必要な自宅療養者が300人を超え、住民からの相談、感染公表に関わる事務など業務は膨らむ一方だった。
24日の同振興局コロナ感染対策地方本部員会議でも「従来の疫学調査では追いつかない」と悲鳴にも似た声が上がり、谷内浩史振興局長は調査の方針転換について「住民、事業所からの問い合わせに丁寧に対応したい」と強調した。