2022年。まずは、寅年のトラにちなんだこちらの写真をご覧ください。この鳥は全長38センチ、北海道では主に夏鳥として飛来するフクロウの仲間、トラフズクです。名に「トラ」とあるように、胸から腹部の縦じまの模様がトラに似ていることから、この名が付いたと言われています。
この写真のトラフズクは、18年にウトナイ湖野生鳥獣保護センターに保護された個体で、翼に負ったけがが原因で自然復帰ができなくなりましたが、現在は市内小学校の出前授業で、子どもたちに野生動物の魅力や人間社会で傷つく野生動物たちの現状を伝えるためのメッセンジャーとして活躍しています。
この個体は、主に低学年を対象とした授業で紹介することが多いのですが、授業の中盤で登場すると、子どもたちが真っ先に注目するのは、トラフズクの頭の上にある二つのふさふさしたものです。それを指さし「これはいったいなんでしょう?」と子どもたちに聞くと、真っ先に返ってくる答えは「耳~!」です。ほかにも、「角」「触角」「眉毛」など、ユニークな答えが出てくることもありますが、実はこれ、ただの「羽」です。
「羽角(うかく)」という名称で、数枚の羽が重なっているだけの飾り羽なのです。この羽がまるでウサギの耳のように見えることから、漢字では「木兎(木にいる兎)」と書き、「ズク」と呼びます。そのため、一部例外はあるものの、「ズク」が付く名のフクロウの頭部には、たいてい兎の耳のような羽が存在します。英名においてもこのトラフズクは、「Long―eared Owl(長い耳のフクロウ)」と表記されています。
こんなに特徴的な羽角ですが、意外にもその役割についてはよく知られていません。羽角があることで、そのシルエットが葉に擬態しているように見えるから、と言われてはいますが、現代においても謎を秘めているところも、フクロウの魅力なのかもしれません。ちなみに本当の耳は目の後方に位置しており、羽毛に覆われているため外見から見ることはできませんが、音を頼りに狩りを行う種のため、集音に適した大きな耳が、この写真の顔のどこかにひっそりと隠れているのです。
神秘性にあふれ、今も昔も人々を魅了するフクロウの仲間たち。「福来朗」や「不苦労」とも呼ばれたこの吉鳥に、新年の幸を願いつつ、私たちもまた彼ら野生動物たちにとって、吉となる存在でありたいと、心より思うのです。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)