新しい年に思う 勇払原野の自然環境保全へ

  • レンジャー通信, 特集
  • 2022年1月7日
河道内調整地の整備が進む冬の勇払原野

  明けましておめでとうございます。ただいま私は、雪も氷もほとんど縁のない帰省先でこの通信を書いています。そのため、現在のウトナイ湖の様子を詳しくお伝えできないのですが、気象データを遠方から見て予想するに、おそらく全面は結氷したままのはず。「道の駅」前の勇払川流入部は凍っておらず、オオハクチョウやマガモなどの姿があるかもしれません。

   さて、昨年、ウトナイ湖はラムサール条約湿地となって30周年、日本野鳥の会がこの地にサンクチュアリを開設して40周年を迎えました。多くのメディアに取り上げていただき、また、私自身がこれまでの活動を振り返り、今後の方向性を確認する機会ともなりました。

   節目の年に当たって取材に対応したり、いろいろな原稿を執筆したりする中で、私は改めて過去の資料を見返し、ウトナイ湖と勇払原野がこれまで幾度も開発の危機にあったこと、市民をはじめ多くの方々のご尽力によって今も貴重な自然が残っていることなどを再認識しました。そして、このような歴史を背景に、私たちは活動を続けられているのだと、思い知りました。

   では、ウトナイ湖サンクチュアリは41年目の今年から、どのような活動を進めていくのか。11月3日にオンラインで開催した周年記念シンポジウムは、「ラムサール条約湿地をウトナイ湖から広げましょう」という私たちの提案を主題にしました。勇払原野の一角、弁天沼周辺では今後、整備される河道内調整地(遊水地)を取り囲む堤防の造成工事が進みます。遊水地は安平川下流域の治水と自然環境の保全を目的としたもの。私たちはまず、堤防部分を除くこの遊水地のラムサール条約湿地登録を目標に、もたらされるメリットの共有や実現に向けた課題の整理などは苫小牧市と、また、遊水地の整備を行う北海道とは、堤防の造成工事が希少な野鳥の生息に影響を及ぼさないよう、地道に協議を重ねていく予定です。

   こうした取り組みは、多くの方々のご理解やご協力があってこそ、進めることができます。市民の皆さんには引き続き、イベントなどさまざまな方法で勇払原野の魅力や重要性を伝えていきたいと考えています。寅年だけに、歴史を踏まえつつも既成概念にトラわれることなく、何事にもトラいします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・中村聡レンジャー)

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