―昨年の製紙業界を振り返って。
「国内では新聞用紙の需要の減少傾向が継続しており、販売量も2020年度に比べ減少している。印刷用紙は、20年に新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞した反動から、販売量が増加した。用途別で見ると、女性誌や旅行雑誌、スポーツ誌など出版用途で定期的に発行する雑誌の部数が減少している一方、カタログやチラシなど商業印刷は、20年のイベント自粛で落ち込んだ需要が戻ってきた」
「昨年10月から苫小牧工場で生産を始めた段ボール原紙は、全体的に需要の回復が見られる。コロナの感染拡大防止で外出自粛が続いており、通信販売向けの需要が堅調となっている。日本製紙連合会の統計(昨年1~10月時点)で、国内出荷数は紙・板紙の合計で前年比2・4%増、19年比でマイナス8・6%となっている」
―業界の現状をどのように受け止めているか。
「コロナ前もスマートフォンの普及、少子高齢化などを背景に紙の需要が減ったが、コロナ禍で需要の収縮が加速している。20年には、段ボール原紙などに使用する板紙の国内出荷が、新聞用紙などに使われる紙を初めて上回った。王子グループでは以前から段ボール原紙の生産に力を入れており、今回、苫小牧工場が対象となった。だが、代わりに他の工場で生産を止めた所もあり、単純に喜べる話ではない」
―カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)の考え方は。
「王子グループ全体の目標として、森林保全、植林を通じた森林の温室効果ガスの蓄積、並びに事業構造の転換や再生可能エネルギー利用量の拡大などに取り組む。50年にネット・ゼロカーボン(温室効果ガスの実質的な排出ゼロ)を目指す」
「目標達成に向け、海外植林の推進、森林の保全、森のリサイクルを進めて生産活動による温室効果ガス排出量を上回るCO2(二酸化炭素)の吸収・固定などを進める。30年度に18年度比で排出量を70%削減する中間目標も立てている。ハードルは高いが、これから具体的な取り組みを模索していく」
―今年の展望は。
「印刷用紙や新聞用紙の需要減少のトレンドは変わらないのではないか。工場としては、新たに段ボール原紙や特殊板紙を生産する12号抄紙機を春に稼働させる。8台体制の安定操業に努めたい」
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2022年のスタートに合わせ、苫小牧市内の企業トップに昨年の総括、新年の展望、カーボンニュートラルへの向き合い方などを聞いた。
メモ
1910年9月に創業。当時の最新の設備と技術を取り入れた工場は東洋一と称され、苫小牧の発展を支えてきた。2022年春に段ボール原紙を生産する2台目の抄紙機の稼働を予定している。