2018年9月に胆振東部地震が発生してから、4度目の冬を迎えた。厚真、安平、むかわの被災3町ではみなし仮設住宅も含め、最優先課題だった「住まいの再建」が夏までにすべて完了した。3町と北海道で行う公共工事などの復旧作業も順調に進み、年度内には一定のめどが立つ。発災当初から見る景色は大きく変わった。
3町は今、復旧から復興へのフェーズを迎えようとしている。厚真町では、より災害に強いまちづくりを目指した新庁舎の建設と、それに合わせた周辺エリアの整備について検討が始まった。定期的にワークショップを開き、防災機能とにぎわい創出に多くの町民の意見を取り入れる考えだ。
安平町では、地震で校舎が損壊した早来中学校の再建が急がれる。老朽化した早来小学校を統合した新たな校舎が来年秋に完成し、3学期には中学生が新校舎での学校生活を予定している。及川秀一郎町長は「単なる復旧ではなく、新しい学校をまちの復興のシンボルにし、地域と共に教育の町としての魅力を高めていく」と語り、「町の未来をつくる大きなチャレンジ」に関係者の期待は高まる。
むかわ町でも、竹中喜之町長が重要プロジェクトとして位置付ける「まちなか再生」に向けた取り組みが本格化した。鵡川地区では被災した中心街の空き店舗を来春までに改修し、チャレンジショップなどを想定した利活用をスタートさせる。穂別地区でも鵡川高校野球部が仮設生徒寮として暮らしていたモバイルハウスの一部を使ってサテライトオフィスを整備し、施設利用の模索が続いている。
また、各学校現場では防災教育に力を入れた取り組みが活発化。震災の「風化」が懸念される中、被災した子どもたちが災害に向き合い、自分事として考える強い防災意識が芽生えようとしている。
ただ、3町とも復興はまだ「道半ば」。いまだ傷の癒えない町民の心のケアや先の見通しが立たない森林の再生、歯止めが掛からない人口減少など、山積みの課題を抱えている。新型コロナウイルス感染拡大により阻まれていたが、今後は町民に寄り添った取り組みも求められる。
震災から3年となる9月6日を迎えるに当たり、厚真町の宮坂尚市朗町長は「理想と希望を掲げて、まちづくりを進めていきたい」と決意を語った。困難があっても、町民たちが復興への歩みを止めることはない。(石川鉄也)