苫小牧市植苗のウトナイ湖サンクチュアリは5月に開設から40周年、ウトナイ湖は12月にラムサール条約湿地登録30周年を迎えた。節目となる今年、同サンクチュアリを管理する日本野鳥の会は、活動を紹介するパネル展や散策ツアーなどの体験イベント、市と共催のシンポジウムを展開した。
ウトナイ湖サンクチュアリは、同会が1981年、地域の自然保護や環境教育を進めるための拠点として、湖と周辺の510ヘクタールを指定した国内初の聖域。82年には国指定鳥獣保護区(特別保護地区)になった。91年にはウトナイ湖が国内4番目のラムサール条約湿地に登録された。
記念事業は5月、40年間の活動をパネル9枚で振り返る展示からスタート。7月には市民らが美々川の源流部散策やタップコップ親水公園周辺の川下りを通じて水環境の大切さなどを学ぶ「すいすいツアー」のほか、市内東部に広がる湿地帯を歩く「勇払原野とことこツアー~初夏の自然を楽しもう」も実施。自生する植物や、国内レッドリストに挙げられ絶滅の恐れがあるアカモズ、チュウヒなどの野鳥の姿を遠くから観察した。
勇払のツアーで案内役を務めた同会主任研究員の安西英明さんは「アカモズは全国のバードウオッチャー憧れの鳥だが、数が減少している」と話し、希少種が生息する湿地を残した勇払原野の価値を改めて示した。
11月には市と共に、会場とオンラインでシンポジウムを開き、サンクチュアリ開設前から湖周辺の撮影を続けてきた東京都在住の写真家、叶内拓哉さんが講演した。叶内さんは、草原性の夏鳥で2015年に1回記録されて以降、姿が確認されていないシマアオジについて「昔は写真を撮る気も起きないくらいいた」と述べ、40年で乾燥化が進み、周辺の環境が草原から森林に遷移しつつあることを指摘した。
また、野鳥繁殖期に当たる4~8月には、ドローンや録音機器を使った新手法の鳥類調査を勇払原野で実施。アカモズ、チュウヒを含む希少鳥類7種の生息を確認した。同原野の厚真町浜厚真地区では、春から夏にかけてタンチョウの繁殖が確認された。
同会苫小牧支部長の鷲田善幸さんは「長きにわたる関係者らの調査が湖や周辺環境の貴重さを伝える役割を果たしてきた」と活動を振り返り、「今後も湖の素晴らしさを伝えるサンクチュアリであってほしい」と期待を込めた。
(半澤孝平)