「地域に信頼される大学に―と、いろんな活動をしてきた」と話すのは北洋大学の奥村訓代学長。4月1日、苫小牧駒沢大学から校名を変更し、再出発した苫小牧市内唯一の4年制大学。語学教育に力を入れたカリキュラムを作り、市民講座を開くなど地域にも積極的に大学を開放した。しかしなお「地元の高校生が行きたいと思う大学には遠い」と自認する。定員割れの解消も今年はかなわず、イメージ回復と生き残りを懸けた戦いは続く。
同大は入学者減による経営難を背景に2018年度、学校法人駒沢大学(東京)から京都育英館(京都)に経営法人が移った。苫小牧駒沢大学のまま卒業したいと希望する学生もおり、移管4年目の今年になって名称を変更。従来の国際文化学部キャリア創造学科に、英語、中国語、日本語のコースを新設した。
重視する語学教育については4月末、名称変更後初めて台湾の国立高雄大学と国際交流協定を締結。その後、インドネシアの国立ブラビジャヤ大学や韓国の3大学とも結んだ。全員留学を目指し、現在もモンゴルやベトナムの大学などと締結準備を進めている。
5月には、近隣住民らを対象に初めて図書館講座を開講し、学生対象のスポーツキャリアに関する授業も、外部講師の回を公開。大学敷地内に二つのウオーキングコースも設置し、自由に散策できるようにした。
部活動では、女子バスケットボール部やスケート部、マーチングバンド部が全国大会に進むなど、華々しい活躍で再出発を彩った。
一方で、課題も多い。移管に伴う人事問題は現在も裁判で係争中。入学者数は定員75人に対し18年度が8人、19年度は33人。20年度に44人まで伸びたが、今年度は再び30人(ほか編入生1人)に落ち込んだ。秋に入学・編入を予定していた20人程度の留学生もコロナ禍で取りやめとなった。総定員の半数の学生確保が要件となる「私立大学等経常費補助金」獲得には入学者増が不可欠だが、達成の見通しは立たない。
同大への進学を目指す留学生に日本語教育を行う学院として「留学生別科」も4月に開設したが、コロナ禍でリモート授業になり、施設の利用は無かった。
奥村学長は「来年度は日本語教員養成課程を開講するほか、ドローン部やeスポーツ部の設置も予定している」とし、再来年度に定員以上の入学応募者の獲得を目指す。「大学で学びたい市民にも広く講義を提供していきたい」と語るのは、地域に必要とされる大学になることが再生へのカギと信じるからだ。(樋口葵)