長引く新型コロナウイルスの感染拡大で、苫小牧の地域経済は感染症対策と向き合う1年となった。飲食業や宿泊業は売り上げの減少が続くものの、緊急事態宣言が明けた10月以降、徐々に客足が戻りつつある。イベントも開かれるようになり、少しずつ日常を取り戻してきた。
5月や8月に道への緊急事態宣言が発令されると、市内でも一時休業する飲食店が相次いだ。一方で、新規の出店や中心部に「横丁」を開設し、にぎわいを創出しようとする企業も現れた。塗装業や水産物卸売業の事業者が、除菌効果のある噴霧器や光触媒コーティングを手掛け、ビジネスチャンスを得ようとする動きもあった。
観光面では、例年2月の「とまこまいスケートまつり」や夏の「とまこまい港まつり」など大型イベントは中止となったが、苫小牧観光協会を中心とした実行委員会主催の「たるまえサンフェスティバル」は延期を経て開催にこぎ着けた。「とまこまいコスプレフェスタ」も規模を縮小しながら開催し、久しぶりのイベントに来場者の笑顔があふれた。
求職者の動向にも変化が現れている。苫小牧公共職業安定所によると、2021年4~10月の新規求職申し込み件数は前年同期比3・9%増の5593件。月間有効求職者数は同10・6%増の2万6523人。特に緊急事態宣言解除後に仕事を求める人が増えている。感染リスクを避けるため飲食や看護、介護など人と接触する職種から転職を目指す人や、解雇や雇い止めに関する相談もあるという。
21年の地域経済について、苫小牧商工会議所の冨田聡子専務は「飲食業がピックアップされがちだが、国の支援金の対象外の業種もあり、あらゆる所に影響が出ている」と指摘する。同商議所にも夏から秋まで、国の一時支援金に関する相談が数多く寄せられ、職員が対応に追われた。
一方、コロナ禍を機に新規創業を目指す動きも増えた。同商議所で研修会を受講することが条件の一つとなっている市の創業サポート事業の申し込み件数は、コロナ前の19年度が9件だったのに対し、20年度は16件、21年度は21件と右肩上がりに伸びている。
国が50年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)を目指す中、苫小牧市も8月に「ゼロカーボンシティ」を宣言した。冨田専務は「22年はカーボンニュートラルに向けた動きが期待される」と新たなビジネス拡大の可能性に触れ、「商工会議所として、会員企業に国や市の事業を伝え、支援を続けたい」と地域経済の再生に期待を込めた。
(室谷実)