(4) 市こども相談センター開所 市と児相の連携強固に 子どもを虐待から守る条例施行

  • 2021この一年, 特集
  • 2021年12月16日
児童虐待のないまちづくりを目指し、さまざまな取り組みが進められた

  2021年1月、苫小牧市双葉町に「市こども相談センター」が開所した。道が運営する室蘭児童相談所苫小牧分室と、市で児童相談を担当する市こども相談課が入る全国でも珍しい形態の施設。児童虐待をはじめ非行や養育など、子どもに関する児童相談に市と児相分室が連携して当たるための拠点だ。

   特に両者の連携が重要なのは児童虐待に関わるケース。センター開設前からも市と児相は3、4カ月に一度、それぞれが支援している子育て世帯について情報共有の場を設けてきたが、市こども相談課の齋藤健巳課長は「時間の都合上、やり取りできる情報量に限界もあった」と話す。

   センター内は、同課と児相の執務エリアは分かれているものの同じフロアにあり、行き来が容易な構造。職員同士は日常的に行き来をして情報交換を図り、支援を必要とする家庭にとって、より良い方向性を共に考えてきた。

   さらに、虐待通告を受けた初動から同課と児相が一緒に対応に当たり、スムーズな一時保護につながったケースもある。齋藤課長は「今までとは比べ物にならないほど迅速で密な連携を取ることができるようになった」と手応えを語る。

   1月は「市子どもを虐待から守る条例」もスタートした。虐待に苦しむ子どもや子育てに悩む親を一人でも減らすため、市と市民、保護者、関係機関の責務を示しており、虐待通告は密告ではなく、必要な支援につながる相談の入り口である―というメッセージも込めた画期的な条例だ。

   条例に基づく初の啓発事業として、市は児童虐待防止推進月間の11月、「子どもを虐待から守るシンポジウム」を市民会館で開催。パネリストを務めた児相の板橋潔分室長は「条例は児童虐待問題に真剣に取り組もうとする苫小牧市の覚悟の表れ」と表現。虐待防止を呼び掛けるデザイン画を初めて小学生から募集するなど、子どもに向けた啓発事業にも乗り出した。

   市は同月、虐待など市民からの情報提供に適切に対応するための特別研修も実施。20年11月に北光町で起きた幼児死体遺棄事件で、庁内の検証委員会が市の対応に「改善の余地がある」と課題を指摘したことを受けた取り組み。市民から情報提供があった場合、一人で抱えずに組織として多角的に判断して対応することの重要性が伝えられた。

   齋藤課長は「虐待の有無にかかわらず、さまざまな理由で困っている保護者や子どもがいる。その困りごとに丁寧に目を向け、支えになることが児童虐待の防止につながる」と力を込めた。

  (姉歯百合子)

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