「政治決戦」の年だった。任期満了を10月に控えた衆院の解散・総選挙の時期が常に焦点となり、新型コロナウイルスの感染状況と東京五輪・パラリンピックをにらみながらの臆測が飛び交った。道9区(胆振・日高管内)も自民党の堀井学氏(49)、立憲民主党の山岡達丸氏(42)、共産党の松橋千春氏(39)が水面下で準備を進めてきた。
ところが10月に入り、事態は急転直下、動いた。岸田文雄新内閣は発足するや否や、衆院解散に打って出た。発足から解散まで10日間、解散から投開票まで17日間。いずれも戦後最短という超短期決戦だ。さらに選挙戦の直前、立憲民主党と共産党による「野党共闘」の結果、9区も松橋氏が出馬を取り下げ、野党候補が一本化される異例尽くしの展開になった。
9区としては初の与野党一騎打ちが実現し、山岡、堀井両氏はつばぜり合いを演じた。コロナと経済再生の対策を軸に、山岡氏は「今の政治を変える」と気勢を上げ、堀井氏は「愛するふるさとを守る」と訴えた。自民党は岸田首相や安倍晋三元首相ら、立憲民主党は枝野幸男代表(当時)ら、「大物」も応援で続々と苫小牧入り。激戦区を象徴するように選挙戦は過熱の一途をたどった。
10月31日投開票の結果、自民党は絶対安定多数を確保し、立憲民主、共産両党は公示前議席から後退。9区は、山岡氏が3選を選挙区初勝利で飾り、堀井氏も比例代表道ブロックの復活当選で4選を果たした。得票数は、山岡氏が11万3512票(得票率51・51%)、堀井氏が10万6842票(同48・49%)。その差6670票の大接戦だった。
三つどもえだった前回(2017年10月)と単純比較はできないが、山岡氏は得票を約2万5000票伸ばしながら、前回の「野党票合計」を約1万票も下回り、堀井氏は前回からの微減で踏みとどまった。一方、9区投票率(小選挙区)は前回比1・04ポイント減の59・92%。過去3番目の低さで、有権者の政治離れは深刻だった。
衆院選から1カ月余り、両氏は熱心な活動を続けている。山岡氏は赤潮被害を確認するためえりも町に足を運ぶなど、選挙中に取り上げた課題に向き合い「地域の声を聞きながら取り組む」ときっぱり。堀井氏も苫小牧港・東港の新岸壁整備など、政権与党の立場を生かし「地域発展のため新年度予算を確保したい」と意気込む。早くも「次」を見据えたような政策実現への熱い戦いが続く。
(選挙取材班)