Q…冬でもナナカマドに果実が付いています。なぜ残っているのでしょう。鳥はナナカマドの果実を食べないのでしょうか
A…ナナカマドの果実は、熟すると野鳥たちに少しずつ食べられるようになります。しかし短期間に食べ尽くされることはなく、2月中旬ごろまで枝先に残っています。食べ尽くされない理由は、ナナカマドの果実には脂肪分や糖分が乏しく、野鳥が好まないためだと考えられています。つまり野鳥にとってはまずくて、人気がないということでしょう。
ナナカマドの果実が厳冬期になってから食べられるようになるのは、食べ物が少なくなり、赤い果実が目立つためだと考えられています。植物は果実を野鳥に食べてもらうことで、種子を運んでもらいます。そのためには果実を野鳥が好む味や色などにしなければなりません。特に野鳥を最初に引きつける色は重要な要素です。ナナカマドは果実を赤くすることで野鳥を引きつけています。野鳥や動物を引きつける色は気候帯によって異なり、熱帯では黒い色の果実が野鳥を引きつけやすいそうです。ちなみに熱帯の黒い果実もまずいものが多いそうです。
ナナカマドの果実を食べにやって来る野鳥にはヒヨドリやツグミ、レンジャクの仲間がいます。ツグミの群れがナナカマドの果実を食べ尽くし、雪上に赤いふんを残して飛び去る様子を見ると、ナナカマドの巧みな戦略が実感できます。
(文とイラスト ゆうふつ原野自然情報センター・村井雅之)=随時掲載