今年は首相からユーチューバーまでさまざまな人たちを取材する機会に恵まれたが、1番印象に残っているのは東日本大震災発生から10年の節目に合わせた東北出張。日々の仕事をこなしながら移動手段や宿泊先も自ら手配し、岩手県と宮城県、福島県に向かった。
10年前と7年前にも同じように東北の被災地を取材したが、自分が派遣されるのはこれで最後になるかもしれないことも念頭に被災地を丁寧に回った。現地では「復興道路」や「復興支援道路」の大半が完成しており、車での長距離移動は以前に比べるとかなり快適だった。がれきの山や仮設住宅があった場所は、更地や公園などになっていた。巨大防潮堤ができ、海が見えなくなっていた地域もあった。住民たちは未曽有の大災害で失った家族や知人らに思いをはせ、懸命に生きている。
岩手県宮古市の田老地区で防災ガイドの女性を取材した際は打ち解けるまで随分時間を要したが、最後に義母が行方不明であることを打ち明けられた。その時、ハッとした。震災での死者数は1万9747人、行方不明者は2556人(3月1日時点、総務省消防庁調べ)。今回の取材対象の中にも家族や友人らを亡くした人たちがいる。心を傷付けないよう真摯(しんし)に、そして慎重に話に耳を傾ける緊張感を久々に体感。その後、苫小牧で身内の急死も経験し、人の思いに寄り添う姿勢を持ち続ける決意をした。
東日本大震災は、その後の災害時の行政支援や人々の心の在り方を大きく変えた。発生から10年が経過し防災意識は高まったが、人口減少や過疎化など課題が山積。活性化には震災の教訓を生かしつつ地域の魅力を高め、企業の投資対象となるようなまちづくりが必要だと感じている。 (室谷実)
◇
2021年も残りわずか。記者たちが今年、印象に残った出来事などを振り返る。