(1)IH大会クラスター 国内最大級の大規模感染 対策強化 氷都の覚悟示す

  • 2021この一年, 特集
  • 2021年12月13日
市や競技関係者に衝撃を与えた全国高校選抜アイスホッケー大会の大規模クラスター

  苫小牧市などが主催する全国高校選抜アイスホッケー大会(8月3~8日)で新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染者集団)が発生し、150人が感染した。「氷都苫小牧」を代表する氷上競技で国内最大級のクラスターが起きたことで、大会実行委員会会長の岩倉博文市長は度重なる謝罪に追われた。市は感染対策の基本方針を見直し、来年も8月開催を予定する。感染状況が見通せない中、万全の対策が求められる。

   同大会はコロナ禍で2020年度の開催を見送ったが、今年度は感染症拡大防止の独自の基本方針を策定した上で、無観客の開催を決断。3年生にとって強豪大学へのスポーツ推薦のアピールの機会であり、各チームからも開催を望む声がほとんどだった。岩倉市長は「全国でアイスホッケーに打ち込んでいる高校生の思いを、氷都苫小牧で受け止めたかった」と決断理由を語った。

   出場者は全国26チームの選手や監督など917人に上った。3日の開会式は取りやめ、白鳥王子アイスアリーナなど市内三つのリンクで5日間の熱戦を繰り広げた。準決勝を前に発熱者が出た1校が棄権したが、最終日の決勝戦は同校と対戦実績がない2校だったため続行し、閉会式も行った。市長は後に「(感染が分かった時点で)中止すべきだった」と判断の甘さを認めた。

   最終的に、感染者は道内外16チームと大会関係者の計150人に上った。国立感染症研究所や道、北大大学院工学研究院なども現地調査に入り、その結果が公表された。氷で冷えた空気がたまりやすく、氷の温度を上げないよう換気が不十分になりやすいスケートリンク特有の現象も判明。併せて、ベンチの透明パネルの撤去や扇風機の設置など効果的な対策の検証も行われ、市内の各施設で対策強化に乗り出している。

   さらに▽大会前からの感染の疑い▽健康記録の確認不足▽会場外の宿泊施設などでチーム外の人との接触―といった課題が浮き彫りになり、市は基本方針の見直しを決定。▽PCR検査または抗原定量検査の実施▽各チームへの監視員の配置▽各チーム内で感染防止対策の担当者を決める―などの追加を検討している。

   アイスホッケーの歴史をけん引してきた自負を持つ苫小牧市だけに競技関係者への衝撃は大きく、「ホッケーに危ないイメージがもたれないか」と心配する声も聞いた。自身も愛好者の岩倉市長は11月30日の市議会で「二度と市民に心配を掛けることがないように取り組んでいかなければならない」と改めて覚悟を語った。(河村俊之)

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   2021年も残り半月余り。今年、地域であった大きな出来事を振り返る。

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