(4)水 湿原保つ美々川

  • ウトナイ湖の自然 その豊かさと今, 特集
  • 2021年11月6日
展望台から望むウトナイ湖

  ウトナイ湖に流入している川は、美々川、オタルマップ川、勇払川の三つ。このうち美々川は、新千歳空港北東の丘陵の湧き水を源とし、美沢川、ペンケナイ川、パンケナイ川などの支川と合流して湿原を形成しながらウトナイ湖に注いでいる。美々川は道央圏において、昔の湿原の姿をとどめる唯一といってもよい川だ。

   その美々川に水を供給している地下水の存在も忘れてはならない。ウトナイ湖・美々川流域は、かつて噴火した支笏火山や樽前山の火山灰が厚く積もっている。火山灰に浸透した水は、浸透しにくい地層に到達すると地下水脈を形成する。美々川の源流の湧き水は、5キロも東方の馬追丘陵の西端付近から地下水によってもたらされている。大事なのは地表に見える川や沼だけではないのだ。

   かつて、ウトナイ湖以外にも湖や沼が多く点在し、広大だった勇払原野の湿原は、最近の50年ほどで8割以上も消滅してしまった。残されたウトナイ湖も、河川改修や周辺の開発によって乾燥化が進み、水質の悪化も懸念されている。産業、開発、レジャー、自然保護と、ウトナイ湖は人との多様な関わり方を経てその姿を今に伝えている。これからウトナイ湖の自然とどう向き合っていくのか、私たちの関わり方が問われている。

  (苫小牧市美術博物館学芸員 江崎逸郎)

  (おわり)

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