アイヌのタマサイ(首飾り)と言えば、連なったガラス玉やくぎ隠しなどを使ったシトキ(ペンダントヘッドのようなもの)を思い浮かべる人が多いだろう。今回の展示会では、現在手に入る素材を使い、アイヌ文化に基づくビーズ作品を作家に依頼した。6人の作者に制作していただいたが、その中で貝澤徹氏(平取町二風谷在住)の作品を紹介する。
この作品のタイトルは「ヤオシケプカムイ」。クモの神様という意味である。クモのおなかの部分がアイヌ文様に見えたことが、タマサイへのイメージにつながったという。素材はツリバナで、長細い1本の材を彫りながら鎖状にし、その一つ一つに文様が入っている。また、シトキとなる部分のクモも同材で作られ、アイヌ文様が彫り込まれている。おなかが床に付かず、足の関節が動くなど細かい部分まで再現されていて、とても手の込んだ作品である。
実際にタマサイのように首から掛けることもでき、クモの神様に守られている気持ちになる。この美しさとこだわりを見ていただきたい。
(国立アイヌ民族博物館学芸員・北嶋イサイカ)
民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館(白老町)の特別展「ビーズ アイヌモシリから世界へ」は12月5日まで開催。観覧料(ウポポイ入場料は別途必要)は大人300円、高校生200円、中学生以下は無料。休館は毎週月曜日。