ウトナイ湖には何種類の昆虫がいるのだろうか。約40年前の調査報告書によると、3000種類を優に超える昆虫が記録されている。
春から夏にかけて、ウトナイ湖の観察路ではさまざまな昆虫に出合える。早春には目玉模様が鮮やかなクジャクチョウ、夏には緑や青の光沢が美しいシジミチョウの仲間が飛び、ホザキシモツケの花にはたくさんのハチやコガネムシ、カミキリムシの仲間などが訪れる。
ウトナイ湖は、その環境の特徴から湿った場所を好む種類や希少種が多く生息する。赤銅色の体色が美しいセスジアカガネオサムシは、道央では分布が限られるがウトナイ湖では数多く記録されている。また、ウトナイ湖の南東部の森に囲まれた砂丘には、希少種のカワラハンミョウ、ウトナイ湖周辺の湿原では希少種のイイジマルリボシヤンマやタガメが確認されている。
1970年ごろに起こったウトナイ湖の乾燥化による植物の変化は、昆虫にも影響を与えている。ヨシ原や湿性草原の減少によって湿った場所を好む昆虫が減り、森林性の昆虫が増加している可能性が指摘されている。現にセスジアカガネオサムシはあまり見られなくなり、カワラハンミョウは近年ほとんど確認されていない。
本展では、ウトナイ湖と周辺で見られる昆虫の標本を約900点展示している。特にタガメは北海道で4例ほどしか採集例が無く、貴重な標本のため必見である。
(苫小牧市美術博物館学芸員 江崎逸郎)