7 むかわ竜 ~被災地を歩いて~ 地域が誇る資源を活用 恐竜化石でまちづくり

  • 特集, 胆振東部地震から3年
  • 2021年9月20日
今年3月に町内で開かれた2体のむかわ竜のお披露目会
今年3月に町内で開かれた2体のむかわ竜のお披露目会
恐竜関連事業の一つとして注目されている化石発掘体験
恐竜関連事業の一つとして注目されている化石発掘体験
むかわ竜をデザインしたラッピング列車(JR北海道提供)
むかわ竜をデザインしたラッピング列車(JR北海道提供)

  むかわ町穂別地区で発掘されたハドロサウルス科の植物食恐竜「カムイサウルス・ジャポニクス」(通称むかわ竜)。町は2018年9月に発生した胆振東部地震からの復興を目指すシンボルとして位置付け、恐竜化石を生かしたまちづくりを進める。観光面はもちろん、地域経済の活性化といった多くの取り組みに活用していく。

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   むかわ竜は、約7200万年前(白亜紀後期)の地層から見つかった全長約8メートルある国内最大の恐竜。3年前の地震で、町は大きな被害に見舞われたが、化石はほぼ無傷で残り、その年の11月に一般にお披露目された。翌19年には全身復元骨格(複製品=レプリカ)が完成し、東京・上野の国立科学博物館で開催された「恐竜博」で全国デビュー。その間、新属新種として認められ、国内外で注目されるなど今やまちをアピールする存在だ。

   その後は新型コロナウイルスの感染拡大で、関連イベントの展示会や町内での化石発掘ツアーなどが中止になり、むかわ竜が登場する機会は減ったが、その輝きは色あせてはいない。昨年、恐竜を資源としたビジネスを展開し商品開発などを進める地域商社が発足。町内の各売り場でさまざまな恐竜関連グッズが商品として売り出されるなど、動きは活発になっている。

   今後は地域が誇る資源の活用にさらに磨きが掛かりそうだ。今月から町の地域おこし協力隊となった京都市出身の高野真一さん(29)は、マーケティング事業を展開する自社のノウハウを生かし、むかわ竜を題材にしたブランドの創出を目指すという。「カムイサウルスはすごく価値の高いものだが、まだ知られていない部分がある」と言い、「ビジュアルを美しくすることで、海外にも認知度を上げていく活動をしていきたい」と意気込む。

   また、この秋には町とJR北海道がタイアップし、「キハ40形」の車両側面にむかわ竜の全身骨格と復元イメージなどをあしらったラッピング列車「復興トレイン」を完成させた。10月2日にJR鵡川駅から運行することが決まっており、日高線を含む4路線を不定期に走る。車内には厚真、安平の両町も合わせて震災からの復旧・復興の様子を伝える写真などを掲示し、ボランティアなどの支援に感謝を伝える場にする。竹中喜之町長は「支援していただいた感謝、復興に向けて頑張っているという思い、JR日高線の維持存続も含めて、皆さんの思いを乗せて走らせたい」と思いを語る。

   むかわ町をはじめ、地震で大きなダメージを受けた胆振東部3町。地域にある資源を生かしたまちづくりを積極的に進め、復興をさらに加速させていきそうだ。

  (胆振東部支局・石川鉄也)

  ―おわり―

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