アイヌの人々が村を守る神として「コタンクルカムイ」と呼んだ鳥、シマフクロウ。
フクロウ目フクロウ科に分類され、全長約70センチ、翼を広げると2メートル近くにもなる世界最大級のフクロウで、かつては北海道に広く生息していましたが、森林破壊による営巣木の消失や河川環境の悪化で餌の魚類が乏しくなり、個体数が減少。現在では道東を中心に72つがい165羽程度(2017年度確認数)しか確認されていない絶滅危惧種です。
環境省は長きにわたり、このシマフクロウの保護増殖事業計画を策定し、給餌事業、巣箱設置・管理、標識調査、傷病対応・事故防止対策、生息環境整備などのさまざまな保全活動を行っています。これらの活動を多くの方々に知っていただけたらと思い、このたび、当センターに展示コーナーを設けました。
シマフクロウの生態や保護増殖事業の内容を記したパネルやシマフクロウの生息圏で実際に使用されていた巣箱を環境省から提供いただき、展示しています。このコーナーで目を見張るのはなんと言っても巣箱です。老朽化によりその役目を終え回収されたものですが、木から取り外された際に落下の衝撃で大きく破損していました。
それを、当センターのボランティアさんにご協力いただき、巧みな技術により破損箇所を完全に修復。さらに巣箱の内部が分かるように専用器具で巣箱を縦半分に切り、開閉できるようにしていただきました。そして、より巣箱のリアル感を出すために、中に薫蒸処理をした木材を敷き、シマフクロウの卵も再現。石こうを型に溶かし入れ、見た目も重さも本物そっくりの卵を仕上げていただきました。
二つ並んだ卵のそばには、実物大の成鳥のシマフクロウや、巣立ったばかりのひなの写真も。これをご覧になれば、その大きさにきっと驚かれるほどのサイズ感です。神秘さをも感じるシマフクロウの魅力を、このコーナーで感じていただけると幸いです。
今もこの北海道の森深く、自然豊かな環境で、ひっそりと暮らすシマフクロウたち。かつては村を守る神とあがめられていましたが、残念ながら私たち人間社会が原因で生息数は激減し、今や種の存続まで危ぶまれています。今度は私たちの手で守っていかなければならない現実を、知っていただけたらと思います。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)
※30日まで臨時休館。