―震災から3年たった今の心境は。
「忘れてはいけない、忘れることのできない、皆さまにも忘れられては困ることとして捉えている。復興計画と地方創生の総合戦略を融合した第2次まちづくり計画を策定し、今年度から歩み始めた。
一方で音や振動に敏感な方もいる。新型コロナウイルス流行で精神的にめいり、日常生活に不安、心配を与えている。在宅訪問プロジェクト、心のケアのアンケートの結果、ハイリスクの方もおり、相談、支援をしてきたが単年度で解決できるものではない。時間をかけてもハード、ソフト両面のバランスを考え、回復に向けた支援、見守りを続けたい。今年度は町民を対象に地域として見守るゲートキーパーの養成研修も予定している」
―まちなか再生は引き続き大きな課題。
「重要プロジェクトの一つ。大きな建物被害を受け、ほとんどが解体され、中心市街地と言いながら空き地が目立つ状況になった。地区ごとに被害状況や課題の違いはあるが、町民にとって生活の場であり、交流の場。インフラだけを偏重せずに、コミュニティーやなりわいの雰囲気を醸成し、交流人口、関心・関係人口を増やせるような空間づくり、にぎわいにつなげていきたい。街並み全体をそのまま元に戻すのではなく、ある程度のゾーンで再生、整備を図る。四季の館やぽぽんた市場、博物館、医療機関などを動線でつなぎ、商業機能の再生だけでなく、子育てや高齢者等の福祉面、コミュニティーなど幅広い視点で考えていくことが求められている」
―災害関係の協定、移転改築する消防庁舎の役割は。
「地震以降、企業・団体と防災に関する協定を17件結んだ。主な内容は(防災行動計画の)水害タイムラインや物資、輸送、災害時における避難所施設の利用など。ボランティア関係で社会福祉協議会とも結んだ。災禍を受けた町として日常防災、緊張感を持った備えを徹底していく。町民の皆さまも防災訓練などを通して、協定の役割、活用の在り方を学んでほしい。
今年度末に完成予定の消防署鵡川支署は、地盤が高く、より安全な場所に整備する。消防庁舎の機能だけではなく、災害対策本部を立ち上げられる防災拠点的な意味合いを持った施設にする」
―記憶と記録の継承について。
「時間と共に記憶が薄れていくのが常だが、まだ復興が残っている。災禍を受けた教訓を生かし、災害に強いまちづくりを進めることが、風化させない取り組みにつながる。復興計画にもある『支援を力に、力を形に』の言葉通り、支援されっ放しではなく、災害を受けた町として今の状況を随時発信していきたい。
町独自の震災記録集を今年度中に作成する予定。震災のレガシーとして、鵡川高校の仮設生徒寮で使ったモバイルハウスを、サテライトオフィスとして再利用したい。情報の発信と置かれている状況を可視化し、声を届けていけたら。『恩返し』というより『恩送り』を続けていきたい」