「防災の日」の1日、胆振東部の厚真町と安平町で、防災のためのオンラインイベントや避難訓練が行われた。3年前に胆振東部地震が発生し、大きな被害をもたらした6日が目前に迫っている中、参加者は真剣な表情で意見交換や安全確保行動に臨んだ。
胆振東部地震で大きな被害を受けた厚真町では、全国に向けて防災の重要性を発信するオンライントークイベントが開かれた。道内の復興を盛り上げている4人が、新型コロナウイルス感染拡大の続く状況下での災害対応などについてトークライブで意見を交わした。
買い物などで得たポイントを使って被災地に支援を届ける「BOSAI POINT(防災ポイント)」を推進する「BOSAI POINT PROJECT(プロジェクト)」などが主催。町内京町のコミュニティースペース「イチカラ」からオンラインでライブ配信した。
冒頭、リモートで参加した厚真町の宮坂尚市朗町長は「(発災から3年たって)市街地は非常に落ち着いた状況に見えるが、コロナ禍で(被災者に)寄り添い、手を差し伸べることができず、負担、不安を払拭(ふっしょく)することができていない。ワクチンの接種を迅速に進め、コミュニティーの再生、心を痛めている方々の力になっていきたい」と説明。町外からの挑戦者の受け入れも積極的に行うとし、「新たな時代に合った変化を求めながら、食糧基地としての責任を果たし、さまざまな夢や希望をかなえられる町、住んでいて良かった町として選んでいただけるように努める」と決意を示した。
この後、トークライブを展開。2019年に町内で起業したマドラーの成田智哉最高経営責任者(CEO)は、町内に住む30代の若手らと開設したイチカラについて「世代を問わずコミュニケーションを取れる場所をつくっている」と紹介。さらに住民同士の困り事を共有できるサービスを構築したことを伝え、「みんなでつながる関係性をつくれる事業ができれば」と話した。
サツドラホールディングス(HD、本社札幌市)の富山浩樹社長は「日常から防災に目を向けてもらう仕組みづくり」として、HDの共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」と連携し、同プロジェクトを立ち上げたことを紹介。「新しい仕組みが平時からないと、防災にもつながっていかないのでは」と指摘し、最近はまちづくりを含めた包括連携協定を自治体と結んでいることも伝えた。
東日本大震災があった宮城県で復興の発信に活動するワンテーブル(本社多賀城市)の島田昌幸代表取締役は、甚大な被害があった沿岸部に商業施設や複合ホテル、教育施設を建設し、いろんな人が入ってきていることから「新たな価値観や文化を取り込むことも必要」と提言。同県亘理(わたり)町のまちづくりについて「音楽や芸術、食を題材に人と人を結合させ、いざという時はチームで支え合う取り組みが始まっている」と説明した。一方で、地方自治体における財源の限界を挙げ、「一つの自治体で備蓄するのではなく、広域的に連携していくことが必要」と説いた。
この日のトークイベントの模様は、動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信している。
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安平町では、町職員が大規模地震発生の際の安全行動を確認する一斉防災訓練「北海道シェイクアウト」と町独自の防災訓練に参加し、災害時の初動態勢などを確認した。
シェイクアウトは、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令されている状況を踏まえ、庁舎内において町職員のみで実施。午前10時に地震が発生したと想定し、頭を抱えて身を守るといった動作を演習した。及川秀一郎町長は行政の防災無線を通じて「防災の日」を呼び掛けるとともに「3年前の胆振東部地震での経験を教訓とし、さらなる防災対策の強化に取り組んでまいります」とアナウンスした。
町独自の防災訓練は午後から胆振、日高管内での大雨を想定して行い、庁舎内に災害対策本部を立ち上げ、情報の集約やさまざまな状況への対応、避難指示発令に至るまでの一連の流れを机上でやりとり。「あびらチャンネル」には防災チャンネルとしての機能があり、訓練仕様にできることなどを町民に周知した。
町の防災担当者は「この日確認した役割分担や情報伝達の流れを地域防災計画のマニュアルに反映させていきたい」と話している。