文化の継承

  • 特集, 記者コラム「風」
  • 2021年9月1日

  苫小牧市ときわ町の陶芸教室「楽遊窯」で先日、ビールジョッキ作りを体験した。ろくろの回転の速さは、足元のペダルの踏み込みで調整する。自動車の運転のようだ。

   こぶし大の丸い粘土を高く伸ばすのが難しく、手でこするほど飲み口の穴は小さくなっていくばかり。先生の手助けでコップの形にはなったが、手本と比べると細く飲みにくそう。だが、初心者ならではの不格好さも、かえって味となるそうだ。

   物づくりに夢中になれる有意義な時間を過ごすことができた。コロナ禍でも、なるべく3密を避けて気分転換を―と体験希望者は例年より多いという。

   だが、市内の陶芸の指導者はシニア世代が中心。後継者不足で存続の危機にひんしているという。「数年したら、窯元はなくなるのではないか」と教室の主宰者。人に教えられるような技術を身に付けるには、遅くとも40代ごろには陶芸を始めていなければ難しいという。文化の秋。苫小牧にある町の財産を見詰め直したい。(高)

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