(2) 災害公営住宅に入居 穏やかな暮らしに安心 町、被災者の自立支える

  • 特集, 胆振東部地震から3年~厚真の未来へ~
  • 2021年8月31日
災害公営住宅の自宅で笑顔を見せる俊昭さん(左)と弘子さん

  「落ち着いて暮らせるだけで十分」―。厚真町の災害公営住宅「新町のぞみ団地」で穏やかな表情を見せる加賀谷俊昭さん(81)。2018年9月の胆振東部地震で宇隆にあった自宅が全壊し、約2年間の仮設住宅暮らしを経験した。妻の弘子さん(78)と「安らいで生活できる場所が見つかった」としみじみ思う。

  ◇

   宇隆で長年にわたり稲作に従事し、自宅は何度もリフォームした。これからも続くはずだった営み。地震が一瞬にして奪い去った。子どもを頼って引っ越した後、18年11月に表町の仮設住宅に入居。住宅はプレハブ造りで約40平方メートル。健康などを気遣う知人らが訪れるたび、狭い部屋では満足に歓迎できず、申し訳なさで胸がいっぱいになった。

   入居期限だった20年10月、新町の災害公営住宅に移った。家族総出で引っ越し作業を行い、現在の「わが家」に腰を据えた。三人掛けソファも置ける3LDK、約100平方メートルの広さ。ゆったりとお茶や会話が楽しめるようになり、「ただただ、うれしい」と居心地の良さを感じる。

   厚真、安平、むかわ3町によると、地震後は3町で最大570世帯985人がプレハブ型応急仮設住宅、みなし仮設住宅、福祉仮設住宅などに入居した。災害救助法で仮設住宅の入居期限は原則2年と定められる中、3町は災害公営住宅などを整備し、引っ越し費用を補助するなど、被災者の自立を支えてきた。

  ◇

   厚真町は新町、本郷、上厚真の3地区に災害公営住宅を整備し、現在25世帯が入居している。転居の際に一律30万円を支給したほか、個別相談や再建プランなど被災者サポート、支援を拡充してきた。

   安平町は公営住宅や地域優良賃貸住宅、ペット飼育用住宅を改修を含めて整備し、現在60世帯が入居。家賃は1カ月あたり上限7万円(独居)、引っ越しに上限10万円を支給。自宅が「半壊以上」の判定を受けて新築する際は最大100万円を出し、16世帯が町内で再出発を果たした。

   むかわ町は、災害公営住宅8戸を含む公営住宅計30戸を整備。全壊世帯に家賃の2割、大規模半壊・半壊世帯に1割を5年間減免する独自の措置も取った。3町は被災者の状況に寄り添いながら支え、自力再建の後押しにつなげてきた。

   加賀谷さんも地震後に稲作からの引退を余儀なくされ、月5万円ほどの年金生活だが、「家賃を払って生活が厳しいのは当たり前。住むところを用意していただき、何事もなく静かに暮らせていけるだけで十分」と感謝しながら自立。「今回(昨年10月)が最後の引っ越しだろう」と話す。

   今は自宅があった周辺の畑でカボチャなどを作付けし、地震でお世話になった人、仮設住宅暮らしを共に経験した人たちに届ける日々。間もなく3年。「忘れることにしている中で『たったんだな』と思うぐらい。前を向いていかないとね」と夫婦で顔を見合わせる。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。