今月中旬、厚真町の市街地からむかわ方面に車で10分ほどの場所にある豊丘地区のマナビィハウス。「地震があった時はどうでしたか?」―。「下から突き上げてくるような感じで、家がつぶれるかと思った」「水が出ないのが大変だったな」―。地域の住民たちがパソコンの画面に映る若者たちの質問に丁寧に答えていた。
画面の向こうにいるのは、旭川大学に通う学生たち。保健福祉学部コミュニティ福祉学科で行っている調査実習の一環で、地域住民の声を聞いていた。インタビューを受けた木沢裕司さん(77)は「(学生の調査実習は)もう何年も続いている。こうして心配してもらって、本当にありがたい」としみじみ語る。
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同大は、コミュニティーを生かした共同作業や生活を支え合う仕組みづくりによって住民が感じている結束力、新たな人材を受け入れやすい環境などを魅力とする豊丘地区に着目。2017年度にゼミで集落の調査を始め、翌年8月には保健福祉学部コミュニティ福祉学科の宿泊型調査実習で、学生が現地に入り、町民と意見を交わした。未曽有の被害をもたらした胆振東部地震はその13日後に起きた。
そうした縁がきっかけとなり、同大は厚真町に物資を支援したほか、18年11月には同学科の学生有志でつくる災害ボランティアサークルが被災した住民を元気づけようと、現地に直接出向いて餅つき大会を開いた。翌年には町の一大行事あつま田舎まつりに参加したほか、豊丘天満宮秋季祭典の運営側補助に当たり、しめ縄づくりや会場設営、露店を手伝うなどして地域の盛り上げに力を発揮した。
この間、町も同大の学生をインターンシップ(職業体験)で受け入れ、19年には同大及び同大短期大学部と包括連携協定を締結した。その後、短大生を町の職員に採用する流れも生まれた。
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同大保健福祉学部コミュニティ福祉学科の大野剛志教授(45)は「調査を通じて学生が成長させてもらっている」と住民の協力に感謝する。新型コロナウイルスの感染を防ぐため、今回の調査実習はオンラインとしたが、住民と学生が対話をできる場面をつくった。「コロナで今は難しいが、学生は『厚真に行きたい』と言っている。オンラインでも双方が心の距離を縮め、楽しんでくれていたようでうれしいですね」と喜ぶ。
大学と地域のパイプ役を担った山路秀丘さん(67)は「学生にアドバイスをもらったりすることで、われわれも自分たちの良さを再認識できる」と話す。来年は豊丘地区が開基130周年を迎えることから記念誌の発行を予定しており、同大の学生がまとめた調査結果や提言内容なども反映させた内容にする考え。「これからの地域発展にもつながっていくのでは」と山路さんは期待する。
調査や復興への支援を通じ、町民と離れた地にいる若者との間により強い”絆”が育まれている。